米選挙、民主党が勝ったら株価は暴落するか 2018年の中間選挙情勢は1998年に似ている

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1998年の中間選挙では、民主党のビル・クリントン大統領はスキャンダルの真っ只中にあった。当初、野党の共和党は「ホワイトウォーター疑惑」で大統領を糾弾したものの決定打は見つからず、1998年の中間選挙では焦点を大統領のセックススキャンダルへと変えた。

共和党はスキャンダル&金融危機でも攻めきれず

ところが中間選挙は予想外の共和党の敗北に終わった。背景には、セックススキャンダルにこだわり過ぎた共和党への嫌悪感があった。何よりも堅調な実体経済からのクリントン政権への国民のサポートがあった。この時のスキャンダラスな政治情勢は、現状、ロシア疑惑で攻めきれない野党の民主党が、矛先をポルノ女優との不倫、そしてそれに伴う選挙資金法違反でトランプ大統領を糾弾している姿に似ている。

一方、金融市場も1998年と2018年では共通項がある。1998年は、クリントン政権初期のロバート・ルービン財務長官のドル高政策の影響と、当時のアラン・グリーンスパンFRB(連邦準備制度理事会)議長の強気の利上げが新興市場からアメリカへ資金逃避を演出した。今回ジェローム・パウエル新FRB議長の強気なスタンスで同じ現象が起きている。

ただし、現象面は同じでも、本質的には大きな違いがある。前者は冷戦勝利後、アメリカの1国支配(グローバリゼーション)が完成する「希望的アメリカファースト」だった。今はアメリカファーストであり、グローバリゼーションが、トランプ大統領の登場で崩壊の危機にある。

そして株式市場では、1998年はアジア通貨危機がロシアの債務問題に波及した年でもあった。夏場に世界屈指の頭脳集団だったLTCM(ロングタームキャピタルマーケット)が崩壊したことを覚えておいでだろうか。この事件でアメリカ株は8月末から10月にかけて約17%も下落した。

だがその逆風の中、結局、クリントン政権と民主党が下院で4議席を増やしたのは驚きだった。ならば、トランプ政権も株価の下落に慌てることはないかもしれない。だが1998年と比べ、2018年は株価のここまでの上昇幅が大きいことと、その一方で、絶好調には見えても実体経済が脆弱なことはマイナス要因だ。つまり、格差拡大に伴ってアメリカ社会がここまで二極化した情勢では、トランプ大統領は、経済面で当時のクリントン大統領時よりもバッファーが少ないと言える。

現在の選挙情勢は、最高裁判事に就任したブレット・カバノー判事の承認をめぐる一連の反動で、大都会の女性票は圧倒的に民主党へ流れそうだ。2016年の大統領選挙では圧倒的な大都会のヒラリー・クリントン票は、彼女自身を救えなかった。だが中間選挙は、大都会の女性票だけで下院の過半数は民主党へ移行する勢いだ。

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