マライア・キャリーも現れたイベントの正体 「仮想通貨バブル」のうたげは続いていた?

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イベント終了の翌日。取引所への上場を間近に控えているという「ODXトークン」の購入を募るメッセージが、件のプロモーターである男性のLINEから届いた。ODXトークンはフィリピン上場企業Xarpas(サーパス)のブロックチェーン子会社が発行するもので、日本の法律上は仮想通貨に該当する可能性が高い。

ノアコインは代理店網やセミナーを通じて販売された(セミナー告知のホームページから抜粋)

日本の改正資金決済法においては、仮想通貨交換業の登録を取らずに日本国内で仮想通貨の売買の媒介や取り次ぎを行うことは禁止されている。男性のLINEメッセージにあるリンクへ行きメールアドレスを送ると、ODXトークンの注文ページに移動できるリンクが送られてくる。男性のLINEメッセージは、媒介や取り次ぎに当たるのか、それとも単なる紹介として済まされるのか、際どいところだ。

なお、取引所上場前に行われた今年2月のノアコイン最終募集時も、男性はLINE上で堂々と「ノアコインを販売します」とメッセージしていた。

お金の力は変わらない

日本国内の仮想通貨を取り巻く状況は、今年1月に起きたコインチェックでの大量流出事件で一変した。9月には仮想通貨交換所「Zaif」もハッキング被害に遭い、交換所を運営していたテックビューロが事業譲渡後に解散することになった。一時は200万円を超えたビットコインの価格も今は70万円台に下がった。

仮想通貨バブルはしぼんだとはいえ、バブル時に集められたお金はそのままの力を保っている。その力の表れが今回のイベントだ。また、最終的に断念したが、東京証券取引所第2部上場のビート・ホールディングス・リミテッド(旧新華ファイナンス)に、ノアが仕掛けた敵対的買収もその1つだろう。

ノアコインに限らず、上場前の仮想通貨でプロモーターや代理店として一稼ぎした一団の中には、大学生向けにブロックチェーン技術の普及・教育イベントを行うところまで現れている。内部管理態勢やセキュリティの構築に追われる交換業者を尻目に、いまだに彼らはわが世の春を謳歌している。

緒方 欽一 東洋経済 記者

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おがた きんいち / Kinichi Ogata

「東洋経済ニュース編集部」の編集者兼記者。消費者金融業界の業界紙、『週刊エコノミスト』編集部を経て現職。「危ない金融商品」や「危うい投資」といったテーマを継続的に取材。好物はお好み焼きと丸ぼうろとなし。

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