「就職氷河期」の再来か? 選別強める企業の新卒採用

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採用担当者の人数やイベント参加回数を減らそうとする企業も現れ始めた。「昨年はすぐに参加枠が埋まった2月以降の合同説明会に、今年はまだまだ空きがある状況だ」(ある就職支援会社)。

文化放送キャリアパートナーズ・就職情報研究所の夏目孝吉所長は「買い手市場が復活することで、企業の優秀な人材へのこだわりがいっそう強くなるのでは」と予測する。ここ数年、企業の新卒に対する採用意欲は強く、09年採用では1980年代のバブル期以降で最高の求人数となった。だが、そうした状況の中でも、内定を複数獲得する学生となかなか内定を得られない学生との、いわゆる二極化が起こっている。今後、募集枠が減る中で、学生の選別がよりシビアになることが予想される。

一般職志望の女子学生には逆風

企業が新卒採用を絞る際、その被害をもろに受けてきたのが女子学生だった。日本女子大学の中野春美・学生生活部キャリア支援課課長は期待を込めて語る。「女子の総合職の内定は年々増えている。メーカーや流通をはじめ、鉄道など男性社員が多かった業種への就職も目立つ。景気が悪くなっても、女子学生の就職チャンスがなくなるわけではない」。経営戦略として女性の感性を重視する企業もある。コア人材となりうる優秀な学生であれば、男女を問わず採用しようとする企業が増えていることも確かだ。

その一方で、厳しい指摘もある。「全体的に女性歓迎ムードはトーンダウンするだろう。男性の不足分を女性で補充するという方針の企業や、単なる“流行”として女性採用をしていた企業が女子学生の採用を減らすことは十分考えられる」(岡崎氏)。金融機関などが一般職の募集を絞れば、結果として女子学生の就職に影響を及ぼすことは間違いない。

ところで、これまでの不況期では、中小・中堅企業が新卒の受け皿になってきた。好況期には大企業に取られてしまう優秀な人材を獲得する絶好のチャンスだからだ。

実際、「中堅の流通・サービス関連では、大量採用に意欲を見せる企業もある」(岡崎氏)。その一方で、不動産関連では10年の新卒採用を見送る企業もすでに出ている。特に、下請け企業の経営は難しい状況にある。中小企業では、採用する体力のある優良企業とそうでないところとの二極化がさらに加速しそうだ。

新卒採用の環境悪化が懸念される中、大学側も危機感を募らせている。最近の大学は就職ガイダンスから業界研究、面接指導まで、至れり尽くせりの就職支援体制を整えている。卒業生の就職実績が、高校生やその保護者が大学を選ぶ際の大きな要因になっているからだ。

就職活動について大学の就職担当者が強調するのは、学生の「職業観の形成」の重要さ。青山学院大学の上倉功・進路・就職センター事務部長は「社会との接点を多く持ち、自己分析ができている学生ほど内定が出る」と強調する。

いよいよ本格化する10年に向けた就職活動。学生には企業の厳しい選別が待ち受けている。


(週刊東洋経済)
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