N-BOXが圧倒的に売れまくる新車市場の死角

充実した商品性で人気呼ぶ裏側では課題も

N-BOXは、2011年12月に発売された先代型から好調に売れている。したがって今ではN-BOXの保有台数も多い。先代型から乗り替える需要も豊富で、売れ行きが伸びた。

N-BOXは実用性の高い人気の軽自動車だから、「フィット」や「シャトル」などの小型車に比べると、新車価格の割に高い金額で売却できる。ホンダカーズのセールスマンも「N-BOXカスタムは、他車に比べると高値で買い取れる。したがってお客様に乗り替えを提案しやすい。フルモデルチェンジを受ける前に、前期型から後期型へ乗り替えるお客様も多い」という。

今の新車販売では、昔に比べると新規の需要が減り、70~80%を乗り替えが占める。そうなると従来型を高値で売却できることも、現行型の売れ行きを左右する。先代型が不人気だと、新型の開発で頑張っても努力が報われにくく、過去を断ち切るために車名を変える車種も多い。

悪しき習慣に基づく届出台数も

ただし、N-BOXは中古車市場に出回っている実質的な未使用の中古車も少なくない。軽自動車は、機能や装備の割に価格が安い。薄利多売の商品だから、メーカーは工場の稼働率をつねに高めたい。

そうなると需要が下がったときは在庫が生じて、持ち切れなくなる場合もある。これを販売会社が届け出て、実質的に未使用の中古車として市場に放出する。走行距離は50km以下が多く、車両の状態も新車に近いが、届け出されているから中古車だ。

このような車両が増えると、普通に使われた中古車の価格と売却時の金額を下げてしまう。つまりユーザーの資産価値を減らすため、自粛の方向にあるが、思うように減らない。N-BOXのような好調に売れる軽自動車では、このような悪しき習慣に基づく届出台数も含まれる。

最近は安全装備や環境性能の向上でクルマの価格が上昇している。それなのに平均所得は1990年代の終盤をピークに下がり、今でも20年前に戻っていない。現在の所得水準は1990年ごろ、つまり30年近く前と同等だ。

そこで1990年ごろの車両価格を見ると、日産8代目「スカイライン」(R32型)2.0GTSが約200万円、日産初代「プリメーラ1.8Ci」が約170万円、トヨタ6代目「カローラ」1.5SEリミテッドが約130万円、トヨタ4代目「スターレット」1.3ソレイユLが約75万円であった。

今はN-BOXのG・Lホンダセンシングが149万9040円だから、当時はエアコンもオプションが多かったことを考えても、カローラと同等か、それ以上の価格になってしまう。クルマの価格と所得のバランスを考えると、ベストセラーカーがカローラからN-BOXにダウンサイジングしたのは当然の成り行きだ。

趣味性に訴えるスポーツカーなどは、発売直後に売れ行きが伸びて、その後は低調になる。実用性よりも「欲しい!」という購買意欲が先立つからだ。

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