バンクシー「切り刻まれた絵画」の新しい価値 作品名は「風船と少女」から「愛はごみ箱へ」に

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通常、オークションハウスでの展示は買い手が品定めをするため、競売日の前に行われることが多い。ちなみに内覧会は通常の場合、特に会員登録などは不要で、自由に誰でも無料で入れる。「見たい絵が、運悪く公開する気がない人に買われてしまうと、もう一生見ることができないかもしれない」(アートファンのひとり)という事情もあり、内覧会情報が出ると「いても立ってもいられずに飛んで行ってしまう」(同)のだという。

今回のバンクシー作品は、経緯からして話題を呼んだこともあり、サザビーズがおそらく話題作りもあって買い手と綿密に話をして公開に踏み切ったと推測される。買い手が決まってから改めて一般公開されるのはオークションの世界ではあまり多くないからだ。

ここ数年、ロンドンのオークションハウスでの公開があった絵で最も注目を浴びたのはレオナルド・ダ・ヴィンチ作でしばらく行方がわからなかった『サルバトール・ムンディ』だろう。

2017年11月にクリスティーズが一般公開の後に行ったオークションで、絵画では史上最高額の4億5030万ドル(500億円超)で落札された。その後、作品自体はアラブ首長国連邦(UAE)に新設されたルーブル・アブダビで掲げられることが決まった。しかし「作品の7〜8割の部分は弟子の手による」といった説が英国人の学者から発表されたからなのか、今年9月の公開予定が延期され、現在は先行きが読めなくなっている。

ほかの作品でもこのように「予期せぬ理由で、買われてしまうとなかなか出てこない」といったことは珍しくない。

次の公開はどこで行うのか

『愛はごみ箱へ』をめぐっては、すでにバンクシー側の関係者も改名を認めたこともあり、真贋を問う論争などはなく、近々に買い手の元に届くことになるだろう。

さて、この「絵画転じて斬新なオブジェ」に変化したこの作品。いったい次は地球上のどこに現れるのか? 神出鬼没の作者同様、予想もつかないところに突然出てくる気がしてならない。次なる出現を心待ちにしたい。

さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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