超富裕層がすごい美術館を建てたがる事情 プライベートジェットの保有にもワケがある
ケタ違いの富豪が個人で設立した法人で、こうした資産を所有するメリットは以下のとおりだ。まずはプライベートジェットとクルーザー。プライベートジェットの値段は、1機あたり20億~50億円ほどだ。利用可能な期間が30年程度なのに対し、税務上の法定耐用年数は5~10年のため、富裕層は単独で購入した航空機を航空会社にリースして、そのリース収入から減価償却費を差し引くことで大幅な赤字を計上できるのだ。特に、中古の航空機になると耐用年数もグッと短くなるため、短期間で多額の減価償却費を計上できる。
たとえば、30億円の航空機を取得した場合、年間のリース収入1億円に対し、減価償却費は3億円計上される。利益が年間10億円あれば、そのうち2億円と相殺することができる。リースをせずに会社で保有し自らが利用することで、搭乗にかかる時間が省けたり、仕事場としてはもちろん、ホテル代わりにもなるので、効率的に世界中を周りたいという理由で所有する資産家も少なくない。
また、クルーザーを福利厚生目的で購入している法人も多い。こちらも税務上の耐用年数は4年と短いため、航空機と同様、多額の減価償却費を計上できるというわけだ。
海外不動産なら国内より多くの減価償却費を計上できる
また、国内外を問わず、別荘を購入する富裕層は多い。昨今は熱海や京都のほか、ハワイ、ロサンゼルスなどの人気も根強い。別荘は社員が利用できる前提で、福利厚生費として経費計上も可能だ。
海外の投資用不動産については、国内の物件に比べ、投資金額が同じでも減価償却費を多く計上できる点で人気がある。さらに、海外不動産は中古物件が圧倒的に多く、そのほとんどが耐用年数4年なので、個人でも、海外不動産の減価償却費を給与所得と相殺し、還付を受けるというケースも増えている。
では、美術館などを法人として設立するメリットはどうか。
「高額な投資や不動産以外の節税方法として、社団法人の設立や公益財団などへの寄付という手段を取る富裕層も多いですが、一部については近年の税制改正により一定の制限がかかっています」(井上税理士)
それでも、まだまだうまみはあるという。実際、最近は一般社団法人という形態の法人が増えているのに気づいただろうか。
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