日本発「10万円ダウン」は海外で支持されるか ゴールドウインがNorth Faceのノウハウ投入

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イタリアで企画された現行商品はファッション性を重視した細身の作りで、カジュアルなボタンや低い前襟が特徴だ。一方、アウトドア仕様は肩周りを広くし、手袋をした手でも開け閉めしやすいスナップボタンを採用。冷たい風をしのげるよう前襟は高くした。ほかの商品も動きやすさや耐久性、防寒性などにこだわったという。

写真右は現行の定番ダウンジャケット、「アークティックパーカー」。左がゴールドウイン企画の本格アウトドア仕様で、防寒性や動きやすさなどにこだわった(記者撮影)

WI社は最近、ウールリッチの創業家からアメリカ本国での事業権も取得した。今後、北米でも商品を本格的に販売する計画で、今回の新アウトドアラインを北米市場攻略の戦略商品と位置づける。商品企画の現場責任者を務めた野村剛司・ウールリッチジャパンMD部部長は、「日本で企画したアウトドアラインが海外でどこまで受け入れられるか。お客さんの反応がすごく楽しみ」と話す。

狙いは海外での実践経験

新アウトドアラインが成功してWI社の事業が拡大すれば、出資比率に応じた持ち分益の形でゴールドウインの業績にも貢献する。ただし、同社がそれ以上に期待するのが、「海外展開のノウハウ獲得」(取締役の本間永一郎・総合企画統括本部長兼グローバル本部長)だ。

ゴールドウインは海外売上比率が数%程度しかない、“超”がつくドメスティック企業。大黒柱のノースをはじめとする主力ブランドはいずれも海外他社のもので、一部を除き国内での使用しか認められていない。いつかは自社のオリジナルブランドで本格的に海外へ出ていきたい――。それが長年の悲願でもある。

新アウトドアラインは白地のロゴタグが目印。来春には薄手のウィンドブレーカーなど、春夏用の商品も数多く店頭に並ぶ予定だ(記者撮影)

そこで同社は今、社名を冠した「ゴールドウイン」事業の再構築を進めている。国内スキー人口の減少で縮小が続いたスキーウエアのブランドだが、ノース事業の元幹部を責任者に抜擢し、普段使いできる衣料の展開を一昨年に開始。スキーからアウトドア、普段使いまでをカバーする総合ブランドに発展させ、将来的には海外にも展開したい考えだ。

その実現のためにも、今回のWI社との資本業務提携は重要な意味を持つ。本間取締役は期待を込めながらこう言う。「ウールリッチ事業を通じて、世界のアウトドアファッションを舞台に実践経験が積める。これはたいへん貴重な経験だ。そこで得たノウハウや知見が、いずれ自社ブランドで海外に出て行くときに必ず役立つ」。

大黒柱である国内のノース事業はここ数年2ケタ成長が続き、ゴールドウインの足元の業績は絶好調。しかし、ノースの勢いが今後も長く続くとは限らない。長期的成長には海外でも稼げる企業になることが不可欠であり、ウールリッチ事業を通じたノウハウの獲得が、その大きな一歩になる。

渡辺 清治 東洋経済 記者
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