「シエンタ」2列シート車が果たす意外な役割 「JPN TAXI」の補佐と「ノート」タクシーに対抗
すでに現行シエンタが3列シートのみラインナップされていた頃から、シエンタのタクシーは普及していたが、2列シート仕様の追加でそのニーズがさらに高まることが予想される。
もともとJPN TAXIが正式デビューする前から、JPN TAXIのベースがシエンタとなるとの情報が流れていたので、「タクシー事業者の一部が『どんな車両なのか』とシエンタをタクシー車両として導入していた」という話をタクシー業界の関係者から聞いたことがある。
シエンタ2列シートをタクシー車両として考えたときに、もう1つの役割は、にわかに増えている日産自動車「ノート」、それも人気グレードになった「e-POWER」タクシーへの対抗馬だ。
日産はタクシー専用車両として「NV200タクシー」をラインナップする。タクシー車両としての乗り心地を重視し、ガソリンとLPGの両方が使えるバイフューエル仕様があるなど、性能面ではかなりの“実力派”となっている。
ただ、ベースは商用バン「NV200バネット」で見た目があまりカッコよくないことから人気がないのか、タクシー車両として見かける頻度も少ない。「簡易立体駐車場の車庫に対応できないという物理的な事情もある」とタクシー事業者から聞いたことがある。
そのためか、ここのところ日産は燃費に優れ、車両価格も比較的安いノートe-POWERをタクシー会社に売り込んでいるようだ。最近は、東京都内でノートe-POWERのタクシーを結構見かける。筆者の自宅近くのあるタクシー事業者は、それまで、中古のクラウンコンフォートを使っていたようだが、最近ノートe-POWERタクシーを導入した。
意外なほど好評を博している日産「ノート」
利用客の間では「1人で乗る分には問題ない」という声も聞かれるほか、ドライバーからも、「マイカーと同じ感覚で運転できるし、タクシー専用車に比べれば疲れも少ない」と、意外なほど好評を博している。
タクシー業界の事情通によると「日産はノートe-POWERに加え、ミニバン『セレナ』のe-POWER仕様も、タクシー事業者へ積極的に売り込んでいるようです」という。タクシー車両の販売が強化できれば、それぞれの販売台数を上積みできるという日産側の事情もある。
トヨタが意図しているか否かは不明ながら、タクシー用車両としてのシエンタ2列シートはノートe-POWERの対抗馬としては、ピッタリといえる。「ノートにこれ以上に好きにさせないようにトヨタが送り込んだ“刺客”ではないか」といぶかるタクシー業界関係者もいるぐらいだ。
ただ、トヨタがタクシーとしての需要を強く意識して、シエンタ2列シートを設定したのだとしたら、JPN TAXIをみずから否定しているようにも見えなくない。また、シエンタに限らず、日産にとってのノートやほかの車種も同じことながら、タクシーとして売りすぎてしまうと、乗用車としての購入を考えているユーザーには「タクシーでよく見かける車種だよね」と、ブランドのイメージダウンになってしまうリスクはある。
それにしても、トヨタがコンフォート系からJPN TAXIへの切り替えで、多少まごつき気味な様子を察知して、日産が素早い対応を見せているのは間違いないようだ。このような“小回り”のきいた対応は日産らしさの1つと言ってもいいだろう。
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