「シエンタ」2列シート車が果たす意外な役割 「JPN TAXI」の補佐と「ノート」タクシーに対抗
東京都内でJPN TAXIを運転する複数の現役タクシードライバーに聞いたところ、性能や使い勝手、燃費などに大きな不満は聞かれない。「自動スライドドアを開け閉めする時間が若干かかる」という話があるぐらいで、スライドドアは狭い場所でも乗り降りさせやすいし、燃費も良く、静粛性もコンフォート/クラウンコンフォートとは比べるべくもない。
実際利用客として乗ってみると、乗り降りの時間が少しかかるのと、見た目ほど大きな荷物が載らないような印象はあるが、これは“慣れ”が解消してくれるのかもしれない。
ただ、導入するタクシー会社にとってネックとなるのがJPN TAXIの車両価格である。JPN TAXIには「和(なごみ)」「匠(たくみ)」という2グレードがあり、車両価格は327万7800~349万9200円で設定されている。装備内容は考慮せずに単純にクラウンコンフォートのスタンダードグレードが新車販売されていたときの価格と、JPNタクシーの廉価グレードとの価格差は約100万円もある。
東京都心部でJPN TAXIをそれなりに見かけるのは、東京都が2020年度まで実施している「次世代タクシーの普及促進事業」において、「環境性能の高いUDタクシー」(予算規模は1万台程度)として、他の自治体よりも手厚い補助金が出ていることと無関係ではないだろう。
一方、地方のタクシー事業者にとっては1台あたり100万円近いコストアップはかなりの負担増となる。背が高く広々としたスライドドア付きで、ハイブリッドシステムを備え、燃費性能にも優れるタクシー車両は確かに魅力的だが、導入を躊躇したとしても違和感はない。東京のタクシー事業者も補助金が打ち切られたら、JPN TAXIの購入を手控えるかもしれない。
地方のタクシー事業者で、JPN TAXIに限らずタクシー車両を新車から新車へ入れ替えることができる事業者などは数少ない。多くが大都市で使用された後のタクシー車両を中古車として購入して代替えを進めて行っているのが実状だ。新車で入れ替えできるほどの余裕がないのである。
新車価格でコンフォートより100万円近くアップしたJPN TAXIは、当然中古車となってもいままでのコンフォート系の中古車より価格はアップする。地方の事業者のなかには、「中古車としてJPN TAXIを導入するハードルも高い」と嘆く声が聞こえる。
シエンタタクシーならJPN TAXIより安く導入できる
そこでシエンタ2列シートの登場である。ハイブリッド車でもあり、車両価格は218万7000~234万0360円(FUNBASE XとFUNBASE G)。タクシーとして使うなら、それぞれの会社に合わせた塗装や専用装備などを施さなければならず、それに多少の費用が上乗せになるとしても、総額で見てJPN TAXIよりは安く導入できるだろう。
シエンタはガソリンを燃料に使うため、単価はLPGよりは高いが、シエンタ2列シート・ハイブリッド仕様の燃費は、JC08モードで28.8km/Lで、JPN TAXIと燃料費で大きな差は出ないと見られる。
東京23区や武蔵野・三鷹地区などでは、走行距離も伸びるのでLPGとの燃料代の差を考えると、ガソリン車をメインとしたタクシー車両にする事業者は少ない。ただ、走行距離がそれほど伸びない地方都市ならば、シエンタハイブリッドの燃費性能で燃料費の差をフォローすることは十分可能ともいわれている。
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