「ザクとうふ」大ヒットの方程式 ガンダムファン社長が語る次世代を創る企業(上)
前人未踏のことをしなければならない
夏目:そんななか、なぜ鳥越さんは第三工場の建設に踏み切ったのですか?
鳥越:私は「いままで誰もやったことがない勝利の方程式を考えた者のみが、圧倒的勝利を手にすることができる」と考えます。たとえば、日露戦争の日本海海戦のとき、名参謀・秋山真之は敵前の大回頭(船首の向きを変えること)を行ない、日本を圧倒的勝利に導きました。思い切った作戦を立案し、微に入り細にわたって計算し尽くし、バルチック艦隊を破ったのです。
私の感覚ですが「これは5割の確率で成功する」と直感したなら、すぐにもやってみる価値があると思います。そして、気合で確率を8割までもっていく。残りの2割は、何とかなります。(笑)
夏目:実感のこもった数字ですね。
鳥越:あと、私が「夢は見るものでなく、叶えるもの」と思っているからです。
先日、あるシンポジウムに出席したとき、学生が多くの人の前で夢を発表する場面があった。そのとき「エコカーの販売をしたい」「震災のとき、被災地でエコカーが走っているのを見て志した」といった発表を聞きました。でもこれは、夢というにはあまりに現実的です。自分の夢って、他人に納得してもらえるものをもたなきゃいけないものなんでしょうか? 私は、論理的に成立することより、もっと大きなことをいって、それに向けてチャレンジしてほしいと思いました。きっと、第三工場の経験があるから、そう思ったのかもしれません。
第三工場建設の際は、お世話になっている取引先の方から「あなたは会長がいままで築いてきた相模屋をつぶす気か?」といわれもしました。大量生産の機構も手探り。弊社のラインは豆腐を並べ、上からパックを被せる仕組みなのですが、当初は製造装置メーカーさんから「こんな方法ではお豆腐が崩れる、むちゃをいわないでほしい」と難色を示され、結局は私自身が研究を繰り返し、完成させました。
しかし、そんな前人未到のことをしなければ、何かを変えることなど不可能なのです。たいへん重要なお取引先さまを工場にご案内したときは、まだ工場の管理が行き届いていない様子が目に留まったようで、全社員の前で「あなたたちがこの規模の工場を運営するのは無理です。これではお任せできません」といわれました。そのとき「ならば、できるまでご指導願います」と食い下がると、そのお取引先さまは、非常に厳しくも、温かく、時には泊まり込みでご指導を下さいました。
(『Voice』2013年12月号より)
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