「ザクとうふ」大ヒットの方程式 ガンダムファン社長が語る次世代を創る企業(上)

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夏目:どのようなメリットがあるのですか?

鳥越:圧倒的に生産が速い。小売店さんは、売り場の代表的な商品であるお豆腐が品切れになることなど絶対避けたいのですが、夏の暑い日に冷奴の需要が増えたり、さらには特売が行なわれたりすると、多いときで普段の20倍もの注文が来ることがあります。しかし弊社は、これに対応できます。

鳥越 淳司(とりごえ じゅんじ) 相模屋食料社長
1973年、京都府生まれ。96年、早稲田大学商学部卒業後、雪印乳業へ入社。02年に相模屋食料に入社し、07年、代表取締役社長に就任。2011年、「焼いておいしい絹厚揚げ」が食品ヒット大賞優秀ヒット賞(日本食糧新聞社制定)を受賞。2012年に発売を開始した「Gとうふ」シリーズが累計出荷数320万個を記録。

ほかにも、人の手を使わず、工場内に複合的な衛生管理の仕組みを導入し、雑菌の繁殖を限りなく抑えたことにより、日持ちを長くすることに成功しました。それまでは5日程度だった日持ちを、段階的に15日にまで延ばすことができたのです。これにより、小売店さんに10t車で丸ごと仕入れていただくこともでき、配送も、販売も、効率的になりました。

ただし、当時は年間の売り上げが約30億円だった時代に、約40億円もの投資をしています。いま思えば、私自身、よくここまで思い切った勝負をしたものだと思います。

夏目:その結果、売り上げが伸びたというわけですね?

鳥越:はい。ただ、それだけではありません。商品点数も半分以下に減らしました。第三工場ができる前のSKU(ストック・キーピング・ユニット。アイテム数の数え方)は370程度。これを一気に3分の1である約120SKUにまで減らしました。生産効率はさらによくなりました。われわれはビジョンをもって、あえて品数を減らしたのです。

「豆腐屋とデキモノは大きくなると潰れる」という言説

夏目:品数を、その市場のメインといえる商品に絞り込み、大量生産し、スケールメリットを活かす。考えてみれば、他業種でもユニクロなどが実施している、スタンダードな手法でもありますね。

ただし、なぜそれまでお豆腐業界に、相模屋が行なったものと同様の動きをする企業がなかったのでしょうか?

鳥越:「豆腐屋と『デキモノ』は、大きくなると潰れる」といわれてきました。たしかに、以前と同じように人海戦術で生産し、ラインも効率化できなければ、大きくなってもリスクばかりが膨らみ、メリットはありません。だから、全国区のメーカーはなかったのです。実際に大手の企業も地場のメーカーをM&Aするなどして参入してきましたが、結局、撤退しています。資金力だけでなく、お豆腐の生産に精通していなければ、こうしたラインはつくれません。だから、いままでお豆腐屋さんは地場産業だったのでしょう。

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