500億円超の大赤字 再建の道筋なき「石原銀行」の迷走

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経営陣を大刷新 3年後黒字転換なるか

経営責任を問われた代表執行役の仁司氏は6月の株主総会を機に退任、りそな銀行で常務執行役員を務めた森田徹氏が新代表執行役に就く。さらに設立時からかかわっていた大塚俊郎副知事が取締役会議長に就任。1%弱を出資する株主のオリックスからも東京営業本部副本部長の上村憲生氏が経営陣に加わる。 臨海副都心の第三セクター処理に辣腕を振るった幹部職員ら5人を派遣し、都は経営関与を強める。しかし、「金融の素人」(都幹部)である都職員がどこまで銀行の経営を立て直せるか。8割超を出資する母体株主であり、「発案者」でもある都側の責任意識はまだ希薄。石原都知事は「(同行を)発案したのは私。責任は私にあるが、私も金融の専門家ではない」と釈明するだけだ。

決算と同時に公表した再建計画も、実現可能性は未知数だ。150億円の経費は3年間で約3分の1の水準に落とす。7000億円超の総資産は貸し出しを減らし、4500億円へ圧縮する。収益の足を引っ張っていた不良債権処理費用は、07年度以降、一般貸倒引当金の戻り(利益計上)を見込むなど、かなり楽観的な前提を置いている。

独自性を誇っていたスコアリングモデルだけに頼る融資はやめ、看板である無担保・無保証のビジネスモデルも大きく変える。開業以来2年間の融資・保証実行件数は約1万6600件。「貸し渋り、貸し剥がしを解消しようとして実際やってみると、資金需要があった」(仁司氏)のは事実だろうが、ほかの金融機関と同じ審査モデルなら同行の存在意義はそもそもあるのだろうか。

石原都知事は「(同行への追加出資は)今のところ考えていない」と断言した。確かに、追加の資金支援が認められる政治環境にはなく、民間からの出資も期待薄だろう。今回公表した再建期間は3年間。資金支援なしに、同行の経営ははたして持ちこたえられるだろうか。

(書き手:山田徹也 撮影:高橋孫一郎)

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