フィンテック系証券会社を味方につける方法 「手数料無料」の証券会社もついに出現!?

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次はロボアドバイザー(人工知能を用いた投資)だ。アメリカで1970年代に株式委託手数料が自由化され、チャールズ・シュワブやDLJといった証券会社が台頭、日本でも2000年代にオンライン証券会社が台頭したように、金融業界でなくても日本がアメリカの後を追うという流れはよくあるが、今のロボアドバイザーも同様だ。2010年前後のアメリカでロボアドバイザー企業が台頭すると、2010年代半ばから日本でもこの波が押し寄せた。業界最大手のウェルスナビや「お金のデザイン」のTHEOだけでなく、大手オンライン証券も楽天証券の「楽ラップ」を筆頭に、各社から次々とロボアドバイザーが提供された。

「資産運用を始めたいけど、誰かに任せてしまいたい」と思う投資家にはロボアドバイザーがいいかもしれない。ロボアドバイザーについて、よくわからないという方は筆者の過去のコラム「ロボアドバイザー手数料1%は高いか安いか」をぜひご覧いただきたい。

実際、日本でもすでにロボアドバイザーを活用している個人投資家は多い。ウェルスナビによれば、日本のロボアドバイザー市場はこの1年半で10倍以上に成長している(2016年12月末時点139億円、2018年6月末1550億円)。アメリカでは2010年前後からベターメントやウェルスフロントなどのロボアドバイザー企業が台頭してきたが、現時点ではウェルスナビの成長速度は、アメリカのロボアドバイザー企業を超えるという。

しかし、アメリカのロボアドバイザー市場は2017年時点の約20兆円から2020年には10倍以上の220兆円に達するとの予測もあるなか、日本の同市場が今後もこれまでの成長速度を維持できるかは不透明だ。ウェルスナビは今後、ロボでの自動運用に加えて運用上のアドバイスの提供にもAIを活用し、市場とシェア双方の拡大を狙うという。

ついに「手数料ゼロ」の証券会社も登場

一方、まったく新しい概念を持ち込む企業もある。その一つは東大発FinTechベンチャー企業Finatext(フィナテキスト)子会社のネット証券、スマートプラスだ。もともとフィナテキストは株価の予想ゲームアプリ「あすかぶ!」や、FXのデモトレードアプリ「かるFX」などで、多くの個人投資家ファンを抱えていたが、8月から証券業に参入した。

同社は従来型の取引手数料を無料としており、アメリカのロビンフッド社を彷彿させる。個人投資家のオーダーが取引所ではなく、「ダークプール」(証券会社が保有する、証券取引所に出されない潜在的な注文)で、通常の取引所よりも有利な価格で約定したときのみ手数料を徴収するというビジネスモデルだ。その手数料は、取引所取引よりも有利になった分の半額である。

また、同社はBaaS(Brokerage as a Service)と呼ぶ新しい概念も持ち込んでいる。BaaS のインターフェイスを通じて、株式売買執行機能やミドル・バックシステムに低コストかつ容易に接続を可能にすることで、異業種の証券業参入のハードルを一気に下げるもくろみだ。また、証券業に参入するだけでなく、証券業のプラットフォームを他社に提供することで一種のインフラ事業にも進出しようとしている。

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