現在、カリフォルニア州の最低賃金はサンフランシスコで時給15ドルだが、マサチューセッツ工科大学が開発したサイト「MIT生活賃金計算機」によれば、子ども1人の共働き世帯が最低限必要な収入を得るには最低でも21ドルが必要だ(一人親世帯は39ドル)。
このようなギャップは企業や政府の努力で埋めることができる。たとえば、家具小売りの「イケア」は2014年から、MITの計算機に基づいた生活賃金を支払うようになっており、他社でも同様の取り組みが始まっている。最低賃金を生活賃金に合わせて引き上げる地域も増えている。
幻想にかまけている暇はない
一方のEITCは、労働意欲の向上や貧困削減などに大きな効果のあることが実証されている。カリフォルニア州は最近、ギグエコノミーをEITCの対象に含め、所得要件も見直すことで申請者数を従来の3倍超に引き上げた。
ただ、同州EITC対象者のうち制度を知っているのは5人中1人にも満たない。全米でも5人に1人しか申請を行っておらず、毎年160億ドルの控除が使われず宙に浮いている。認知度向上など、さらなる対策が必要なのは明白だ。
低所得者や障害者向けの医療扶助制度「メディケイド」や補助的栄養支援プログラム(フードスタンプ)などへの登録簡素化も欠かせない。毎年500億ドル相当の連邦社会保障給付が未申請となっているからだ。現在、確実に給付が行われるよう対象者を自動登録する実験が5つの州で進んでいる。
つまり、生活賃金の実現に向けて、なすべき仕事は山とある。BIや雇用保障のような幻想にかまけている暇はない。
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