半導体商社が「再編ラッシュ」に突入したワケ 生き残りを賭け、合併・統合の号砲が鳴った

拡大
縮小

日本半導体商社協会の大西利樹会長は「日本の独特の商習慣が起因している」という。海外では経営陣の交代によって商流が見直されることが多く、商社も再編を余儀なくされてきた。M&Aも盛んで、規模拡大もしやすかった。

一方、日本では半導体メーカーの製品の性能も高く、総合家電メーカーの販売力もあったため、商社はその間に立つだけで儲けることができていた。日本企業独特の習慣で、高度な技術サポートが求められることから商社の重要度も高く、商権の喪失も起こりにくかった。

半導体商社は手をこまぬいているわけではない。ホテル向けの自動翻訳電話や植物工場の自動化、病院向けのウェアラブル端末など、保有する商材を活用してIoTサービスを提案し、活路を見出そうとしている。ただ、IoTといっても、使える製品は保有している商材にとどまり、その範囲は商権に依存してしまう。AIやIoTに関連する技術系人員はIT企業やメーカーも含めた争奪戦になっており、拡大しようにも人材確保の難易度も高い。

次の再編の目はルネサス系

では、次の焦点は何か。注目は、再編が出遅れているルネサスエレクトロニクス系の商社だ。上場企業だけでも10社以上の商社が存在している。

たとえば、韓国サムスン電子の場合、2018年5月にトーメンデバイスが丸文セミコンから事業譲渡を受けたことにより、日本のサムスンの特約店は1社になった。ソニーに関しても、UKCとバイテックの統合によって特約店は1社になる。もしルネサス系で同じことが起こるのであれば、ルネサス系の商社も再編を迫られる可能性はある。

グローバルな半導体再編と日本市場の弱まりが、ようやく商社に火をつけた。大西会長はこうした再編の動きは「まだ続く可能性がある」と話している。

藤原 宏成 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ふじわら ひろなる / Hironaru Fujiwara

1994年生まれ、静岡県浜松市出身。2017年、早稲田大学商学部卒、東洋経済新報社入社。学生時代は、ゼミで金融、サークルで広告を研究。銀行など金融業界を担当。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT