絶好調「工作機械」に迫る米中貿易摩擦の影 海外受注高が21カ月ぶりに前年同月を下回る

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ファナックの稲葉善治会長は、いち早く日中貿易摩擦の影響に言及していた(撮影:尾形文繁)

「とにかく機械をくれ、と言われていた昨年から一転して、中国での商談が長引くようになってきた」。大手工作機械メーカーの幹部は、そうつぶやいた。

自動車やスマートフォンなど、さまざまな製品の部品を作るのに欠かせない工作機械。2017年度は日本メーカーの受注高が1兆7803億円という過去最高の金額をたたき出し、業界は空前の活況が続いていた。だが9月26日に発表された8月の月次受注高のうち、半分以上を占める外需が1年9ヶ月ぶりに前年同月を下回った。外需全体では4.6%減、中でも中国の落ち込みは大きく、37.3%減だった。

背景にあるのが、米中貿易摩擦である。対米輸出に対する関税が上昇するリスクを見込む中国企業が、設備投資にブレーキを掛け始めている。“我が世の春”を謳歌していた業界各社には動揺が広がっている。

空前の活況を呈していたが…

工作機械の受注額は、月次1000億円が好不況の目安とされる。昨年は年間を通してそれを上回った。今年に入っても好況は継続し、一時期は受注高が「異次元」ともいわれる2000億円に迫った。「必要な量の部品が回ってこない」(東芝機械)と、各社が部品調達難や納期延伸に嬉しい悲鳴を上げ続けているほどだ。

スマートフォン部品関連の需要のほか、自動車業界やロボット・建機などのメーカーからの受注も好調が続き、「どの国、どの業界からの受注が良いとかではなく、すべてが良い」(オークマ幹部)という状況だった。

しかし今年7月、業界に動揺が走った。工作機械の頭脳部分であるNC(数値制御)装置の世界トップメーカー、ファナックの稲葉善治会長が決算説明会で、「中国で貿易戦争を懸念し、自動車関連メーカーが様子を見ている。設備投資意欲が落ちた結果、受注に影響が出始めている」と明言したのである。

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