絶好調「工作機械」に迫る米中貿易摩擦の影

海外受注高が21カ月ぶりに前年同月を下回る

米中貿易摩擦の影響は直接的なものではない。日本の工作機械メーカーが中国で作った製品を米国に輸出するケースは極めて少なく、その逆も同様だからだ。

懸念されているのは間接的な影響だ。中国の自動車や関連部品、半導体製造装置のメーカーが、輸入関税による米国への輸出減や、中国国内における景況感の悪化を見込み、工作機械をはじめとする設備投資を控える。それが現実なものになりつつある。

7月からすでに兆候は出ていた

実際、中国向け受注は7月、それまで前年同月比プラスを維持してきた「一般機械向け」(ロボットや建設機械など)がマイナスに転じ、8月には「自動車向け」もマイナスに転じた。受注統計を集計する業界団体・日本工作機械工業会(日工会)の飯村幸生会長は9月26日の記者会見で、「日工会会員企業の複数社で、中国企業との契約の決まりが遅くなった」と話す。

影響は、オークマや牧野フライスなど、用途の幅広い汎用機を手掛けるメーカーのほうが大きいもようだ。専用機が中心の不二越は、「特筆すべき影響はない」という。

とはいえ、工作機械と同じく設備投資動向に左右される、板金加工機の国内大手・アマダホールディングスも「現地で設備投資意欲が減速していると報告が入っている」とする。今後、戦略の見直しを迫られる企業が出てくるかもしれない。

ただ、それでも工作機械業界は強気な姿勢を崩さない。というのも、国内と中国を除いた海外からの受注水準が、依然として高いからだ。特に国内は深刻な人手不足に対応しようと、自動化など生産性向上を狙った設備投資意欲が高い。

日工会は年初に今年度の受注見通しを1兆7000億円と発表していたが、26日の会見で1兆8500億円に引き上げたことを明らかにした。8月の月次受注高も、中国の不透明感をよそに1404億円と高い水準だった。さまざまなプラス・マイナス両面の要素が絡み合っており、今後については「一時的な需要の動きだけでは語りきれない」(不二越幹部)のも事実だ。

工作機械業界は、歴史的に好況の後に谷間へと突き落とされる経験をしている。「(今の好調が)どこまで続くのか」(牧野フライス製作所幹部)などと、業界各社からは戸惑いの声が漏れていた。関係者が最も恐れるのが、「全世界の景気が冷えること」(日工会の飯村会長)。リーマンショックほどのインパクトでなくとも、今回の米中貿易摩擦で世界全体の景気がしぼめば、工作機械業界の“谷間”への入り口ともなる。

「景気の先行指標」ともいわれる工作機械の受注統計。はたして空前の活況はこのまま右肩下がりに収束していくのか、あるいは持ち直して高水準に復帰するのか。いずれにしても、中国の動向から目が離せない。

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