「サリン」「VXガス」製造の知られざる舞台裏

オウム事件「教祖の寵愛」「上司との確執」

そのころ、麻原教祖は「生物兵器」に関心があり腹心の遠藤元死刑囚にその製造を指示していた。しかしことごとく失敗。教団は化学兵器にシフトし村井氏が「土谷がいいだろう」と提案、土谷元死刑囚が化学兵器の製造に取り掛かり次々と成功させる。

遠藤元死刑囚は獣医学とウィルスが専門、土谷元死刑囚は化学と、専門も違う。遠藤元死刑囚は化学の知識がなく、成果を出せない遠藤元死刑囚はことあるごとに土谷元死刑囚に干渉してきたという。土谷元死刑囚は語る。

「遠藤はことごとく失敗していました。尊師から依頼されたボツリヌス菌も炭疽菌も全部失敗です。一方で私は次々と成功させていました。遠藤は部下を罵倒したり八つ当たりしたりしていました。私は中川さんと一緒にワーク(化学活動)をしていましたが、しかし遠藤は私の上司です。遠藤は厚生大臣で私は次官でした。干渉してくるのでようやく第一厚生省と第二厚生省に分けてもらったのに1994年7月、遠藤がこういったんです。
『僕は中川を信用していない。彼は僕と君が失敗するように念じている。彼を信用しないほうがいいぞ。いいか? これからは君のワーク(サリン、LSD、PCP製造)に僕は介入するからな』
もともと私は尊師に直接会うことができましたし相談もできたのに、1994年の8月ごろ『君は勝手に尊師に会っているようだけれどもこれからは全部僕を通せ』と言ってきました。私は腹立たしかったですが指示どおりにしました。遠藤の研究室にも自由には入れないように私から鍵を取り上げ、そのくせ自分は平気で私の棟に入ってきます。
私の部下にも私を通り越して勝手に指示をしたり、私を下請けのように使おうとしたりしました。それに自分ではできないから私に何度も相談してやっと仕上げた試薬なども自分の手柄にすることがよくありました」

嫉妬、蹴落とし合い…オウムとは何か

取り調べを行った元警視庁捜査一課理事官の大峯氏によると土谷元死刑囚は遠藤元死刑囚の話となると、次から次へとしゃべるようになったという。土谷元死刑囚は遠藤元死刑囚を有能な自分を使って手柄を奪う嫌な上司とみていた。さらに麻原教祖の寵愛を受ける自分を遠藤元死刑囚が嫉妬しているともみていたようだし、ことごとく失敗している遠藤元死刑囚が麻原教祖から大切にされていることも気に入らなかったようだ。

土谷の手書きの「松本サリンで使用した扇風機付の改造車」の絵。フジテレビ「直撃!シンソウ坂上SP独占スクープ!サリン事件極秘資料―天才信者VS伝説の刑事―」は10月4日(木)よる19時57分から放送です(写真:フジテレビ)

この構図は私たちの社会でもよく見られるものかもしれない。教祖の寵愛を求めて張り合う2人の信者。しかしそうした寵愛を求める思いから毒ガス兵器は生まれたのだった。

そして教団は1995年3月20日、未曾有のテロ事件、地下鉄サリン事件を起こす。その舞台裏では土谷元死刑囚と遠藤元死刑囚の確執が起きていた。オウム真理教とは何だったのか。そこには私たちの住む世界と変わらない、嫉妬やねたみ、感情にまみれた小さな社会があったのではないだろうか。

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