理想は掲げ続けることで意味をもつ 水野正人 × 三ツ谷洋子 対談(下)
「備えよ、つねに」を合言葉に
三ツ谷:招致委員会事務局のトップを務めるうえで、大切にされていたことはどのようなことですか。
水野:約130名の事務局スタッフに話していたのは、“Be prepared(備えよ、つねに)” という言葉です。2016年の招致活動を経験して全体のスケジュールを事務局で共有していたので、各スタッフの役割分担を明確にして十分な時間をかけて準備をすれば、いかなる不測の事態にも対応できると考えていました。
三ツ谷:ただ、今回の招致活動は16年と比べると資金が大幅に少ないと聞きました。
水野:今回の予算は前回の半分でしたのでお金の使い方には徹底的にメリハリをつけました。当然のことですが、発注する際には必ず相見積もりを取り、値段を精査しました。ホテルもなるべく格安のところを必死に探しました。そのおかげもあり、プレゼンの映像など必要なところにはそれなりのお金をかけて作成することができました。
招致活動を振り返ると、やはり用意周到な準備とチームワークがすべてだったと感じています。
三ツ谷:ところで、招致委員会はどのように運営されたのでしょうか。
水野:IOCの五輪評価委員には、前回は「横の連携が足りないのでは」とアドバイスを受けました。実際、各セクションに意思の疎通が不十分なところもあったようです。
今回は、寄り合い所帯の事務局の各組織が、縦横斜めに連携を取れるように、多くのタスクフォース(特定の課題を達成するために一時的に設置される組織)をつくりました。各部のスタッフがタスクフォースに参加し、事務局全体で情報を共有したことで、各組織をうまく融合できたと思います。