理想は掲げ続けることで意味をもつ 水野正人 × 三ツ谷洋子 対談(下)

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 「2020年東京五輪の「招致委員会CEO」を務め、招致活動成功の「陰の立て役者」ともいわれる水野正人氏。IOC総会の最終プレゼンテーションで、大きな身振りと笑顔を交え、英語とフランス語で堂々と日本の強みを述べる姿が印象に残っている人も多いだろう。 そんな水野氏が今回、東京五輪に向けての率直な思いを語った。
東京への投票を呼びかけるため、水面下で行なわれたロビー活動の裏側には、いったいどのような駆け引きがあったのか。2016年五輪の招致活動時よりも資金面に乏しいなか、約130名の事務局スタッフをどのようにまとめていったのか。そして、五輪を通じてどのような日本の未来像を描いているのか――。 スポーツビジネスの専門家、三ツ谷洋子・法政大学教授が迫る。」
 

「備えよ、つねに」を合言葉に

三ツ谷招致委員会事務局のトップを務めるうえで、大切にされていたことはどのようなことですか。

水野約130名の事務局スタッフに話していたのは、“Be prepared(備えよ、つねに)” という言葉です。2016年の招致活動を経験して全体のスケジュールを事務局で共有していたので、各スタッフの役割分担を明確にして十分な時間をかけて準備をすれば、いかなる不測の事態にも対応できると考えていました。

三ツ谷ただ、今回の招致活動は16年と比べると資金が大幅に少ないと聞きました。

水野今回の予算は前回の半分でしたのでお金の使い方には徹底的にメリハリをつけました。当然のことですが、発注する際には必ず相見積もりを取り、値段を精査しました。ホテルもなるべく格安のところを必死に探しました。そのおかげもあり、プレゼンの映像など必要なところにはそれなりのお金をかけて作成することができました。

招致活動を振り返ると、やはり用意周到な準備とチームワークがすべてだったと感じています。

三ツ谷ところで、招致委員会はどのように運営されたのでしょうか。

水野IOCの五輪評価委員には、前回は「横の連携が足りないのでは」とアドバイスを受けました。実際、各セクションに意思の疎通が不十分なところもあったようです。

今回は、寄り合い所帯の事務局の各組織が、縦横斜めに連携を取れるように、多くのタスクフォース(特定の課題を達成するために一時的に設置される組織)をつくりました。各部のスタッフがタスクフォースに参加し、事務局全体で情報を共有したことで、各組織をうまく融合できたと思います。

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