働き方を変える「Slack」、急成長の舞台裏 会社の合い言葉は「しっかり働き家に帰ろう」
「現時点で使い道は決まっていないが、それは柔軟に使えるということでもある。私が生まれたのは1973年でちょうどスタグフレーションの時期だった。1992年には、不動産業を営んでいた私の父の会社が倒産した。金利が15%もあって多くの不動産屋が廃業に追い込まれた時代だ。
1991年に高校を卒業したときは不景気だったし、その後ネットバブルも経験しているし、破綻したリーマン・ブラザーズの株も持っていた。だから、景気は循環することを、身をもって知っている。資金調達しやすい環境で資金を得ることは、今後環境が悪化する可能性を考えるととても堅実なことだし、景気が悪くなったときに現金を持っていることは強みにもなる」
社風はアンチシリコンバレー的?
バターフィールドCEOの経営哲学は、スラックのオフィスや社風にも表われている。同社の合言葉は、「Work hard and go home(しっかり働き家に帰ろう)」。実際、サンフランシスコのオフィス街にある新社屋に、午後6時半に訪れてみると、ほとんど誰もいない。
シリコンバレーやサンフランシスコのハイテク企業の“名物”と言えば、卓球台やゲームルームや、いつでも食べ放題の食堂などだが、スラックの本社にはこうしたものは一切ない。
バターフィールドCEOは言う。
「社員の多くは日常生活において、責任感や忠誠心を抱く対象がいくつかある。そのうち1つが会社であって欲しいと思うが、彼らにとっては家族のほうが大事なことも認識している。コミュニティの一員や一市民として、地域の行事に携わることもあるだろうし、宗教が大事な人もいる。
職場での時間を効率的に使って、プロ意識を持って働けば、誰だってちゃんと定時に帰宅できる。そういう会社であれば、より多くの対象者の中から採用できる。優秀な人で子育てをしている人は少なくないからね。
それに、そういう働き方のほうがより生産的でもある。だいたい人が1日において徹底的に集中して仕事をできる時間はかぎられている。その生産性の高い時間にしっかり働き、あとは休んでもらったほうが、卓球時間3時間を挟んで16時間働いてもらうよりずっといい」
だからと言って、日本のオフィスにありがちな無味乾燥な感じでもない。10階建ての新社屋では、それぞれのフロアに「砂漠」や「海」といったテーマがある。
たとえば砂漠がテーマのフロアの壁はしっくいだったり、サボテンが並んでいたりと、かなり本格的。デザインの仕事をしていたことがあるバターフィールドCEOはアート好きでもあり、各フロアには若手アーティストの作品が数多く飾られている。
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