北朝鮮の「通常兵器」はどこまで進化したのか

軍事パレードに登場した兵器を分析

パレードには新型の自走砲も登場したが、これは想定の範囲内だ。この自走砲は1990年代初頭に開発されたモデルの後継で、2種類が存在する。1つは国産の122ミリ砲を装備したモデルで、こちらは2017年4月と今年2月のパレードでも目撃されている。

もう1つは今回のパレードで新しく登場した機種で、こちらは152ミリ砲を装備しているもようだ。さらに新型主力戦車と同じ携帯式地対空ミサイルシステムや手榴弾発射装置、ソフトキルの防衛システムによっても身を固めている。旧型自走砲の弱点をカバーする長い射程を持ち、最前線近くでの投入を想定して防衛能力を高めたモデルだ。これによって朝鮮人民軍は砲撃作戦の間口を大幅に広げることが可能となる。

もちろん、パレードでは生煮えの新兵器が披露されることが多いため、この新型自走砲も実戦投入までにはまだ相当な開発期間が必要になる可能性はある。とはいえ、北朝鮮の砲撃力はすでに量の面で韓国を大きく凌駕している。そうした量的リードの上にこのような新型自走砲が大量導入されることになれば、韓国を取り巻く北朝鮮からの砲撃の脅威は一段と深刻化することになるだろう。

巨大な「M1989 コクサン」自走砲も健在

あの巨大な「M1989コクサン」自走砲も健在だ(北朝鮮では「チュチェ砲」と呼ばれている)。コクサン自走砲が北朝鮮の軍事パレードに姿を現さないことは、まずありえない。1970年代に初代モデルが登場したときは、世界的に見ても圧倒的な射程を誇った。現在でも、韓国が擁する砲撃装備の多くを上回る射程を維持している。ただ、コクサンの170ミリ砲が持つ圧倒的な威力は相当な犠牲の上に成り立っている。最大距離で砲撃を行うと負担が大きすぎて、自慢の170ミリ砲があっという間に使い物にならなくなってしまうのだ。

「M1989コクサン」(写真:北朝鮮ニュース)

このような自走砲の列に続いて登場したのが、北朝鮮が大量に保有する多連装ロケット砲の一群である。朝鮮人民軍は世界で最も多連装ロケット砲の使用に積極的で、同兵器の破壊力を大幅に引き上げてきた。その能力は2010年の延坪(ヨンピョン)島砲撃事件でも実証されている。北朝鮮が連射した122ミリロケット弾よって島はズタズタになった。

パレードでは伝統的な122ミリロケット砲に加えて、さらに大口径の22連装240ミリロケット砲、8連装300ミリロケット砲も姿を現した。22連装240ミリロケット砲はGPS誘導ロケット弾を使用し、推定60キロメートルの射程を実現している。8連装300ミリロケット砲は200キロメートル超の射程を持ち、GPS誘導によって標的を正確にピンポイント攻撃できる。つまり、韓国の北半分にある戦略拠点はすべて狙い撃ちされる可能性があるということだ。有効な防衛システムを確立できなければ、韓国の軍事施設は重大な危機にさらされることになるだろう。

この後に続いたのは、6輪式装甲兵員輸送車をベースとした新型の戦闘用車両だ。見た目は地味だが、8連装のミサイル発射装置を備えている。実はこれこそが今回のパレードで最も注目すべき新兵器だ。ここに装填される超々長射程型の対戦車誘導ミサイルは、イスラエルの「スパイクNLOS」や中国の「HJ-10」に匹敵する性能を達成しているとみられ、機甲戦における朝鮮人民軍の戦闘力は大幅に引き上げられることになる。

6輪式装甲兵員輸送車をベースとした新型の戦闘用車両(写真:北朝鮮ニュース)

なるほど、中身のない張りぼてを使って最新鋭兵器を開発したかのように装っている可能性もなくはない。北朝鮮が軍事パレードを行うたびに周囲からはこのような反応が出てくるのがいつもの光景だ。

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