日本の大都市は洪水への対策が遅れている 台風など豪雨の増加で対策が急務に
政府と地方自治体は近年、ダムや貯水池、堤防などを建設し、水害対策を強化していきた。しかし、内閣官房参与の藤井聡氏は、建設のペースが遅すぎるとみている。
同氏はロイターの取材に「全国各地に、予算さえつけば迅速にできるところがたくさんある。それは可及的速やかに対策していく必要がある。その財源に関しては国債を充当することが適切」と述べた。
国土交通省は8月、来年度予算の概算要求で、水害対策の推進のために前年当初比3割増となる5273億円を要求した。堤防のかさ上げや、避難警戒体制構築などが含まれる。
自宅が水没
1947年、カスリーン台風による大雨で東京にも大規模な洪水が発生、全国で1000人以上が犠牲となった。
この洪水を体験した葛飾区東新小岩の町会長・中川栄久氏(82)は、軒下まで達した水から逃れ、1階建ての自宅の屋根の上で父親と一緒に3週間過ごしたと当時を振り返る。
隣の2階家には、近所の人が13人避難していたという。「その中に、明日生まれてもおかしくないような大きいお腹をした女性がいた。お産婆さんは呼べないし、医者には連れて行けないし、どうしたらいいのか皆心配していた。妊婦さんが死んだらどうしようかと思うと、子供ながら眠れないようなことだった」と中川氏は語った。
さらに同氏は当時と今を比べ、「今なら大変だと思う。(これだけ家が密集して)そこに水が来たら、どうにもならないのではないか」と懸念を示した。
短時間に降る集中豪雨は、日本全体で増加している。1時間に80ミリ超の降雨は、1976年―85年の10年間の年平均11回に対し、2017年までの10年間では18回に増えた。