メガバンクは「スマホ決済」で泥沼にはまる 「地銀の囲い込み」に成功しても残る課題

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お客が店でモノを買った代金をスマホで決済し、それがクレジットカード決済とひも付いている場合には、クレジットカード番号などの情報は「トークン」と呼ばれる暗号に変換されて、店舗の読み取り機などに残らないようにする、というのが通常のやり方だ。

トークンはカード会社に送られるが、その様式は受け取るカード会社ごとに異なっている。スマホ決済を導入している小売業者は、個々のカード会社と契約して、暗号を送受するシステムを別々に作る必要がある。

そうした手続きは小売業者にとって非常にややこしくお金もかかるため、多くのクレジットカードがスマホ決済に対応していないという状態になり、結局、スマホ決済の利用が制限されてしまうという問題が生じている。

クレジットカードの暗号情報を送るシステムを備えていないから、スマホ決済ができない――。そこで三菱UFJ銀行とTISが考えたのが、小売業者とカード会社との間に立って暗号情報を一括で管理するとともに、各カード会社へトークンを送付するシステムの構築と送付代行サービスだ。

これは一種のプラットフォームビジネスであり、業界用語では、トークンリクエスタ代行サービスと呼ばれている。このサービスを大手銀行が手掛けるのは初めてだ。三菱UFJ銀行とTISが始めるこのサービスはスマホ決済の拡大、ひいてはキャッシュレス化の進展に一定程度貢献するとみてよいだろう。

三菱UFJ銀行は、2019年春にも独自のスマホ決済サービス、「MUFGウォレット」をスタートさせる予定だが、そこにこの仕組みが搭載され、多くのクレジットカードや複数ブランドのデビットカードを利用した決済、QRコード決済などが一挙に可能となる。先行するオリガミ、楽天、LINEなどネット企業のスマホ決済サービスに負けない利便性を大きくPRするだろう。

提携銀行がない三菱UFJの戦略

一方、三菱UFJ銀行は地銀などにもこの代行サービスを提供することを狙っている。

決済手段はネットワーク効果が働きやすく、利用者の数が増えるほど、利便性が高まり、競合するサービスを潰して市場を席巻しやすい。

スマホ決済ではみずほ銀行がゆうちょ銀行や複数の地銀と提携した形で、「Jコイン」というサービスの創設準備を進めている。それに対して、技術力で先行しているMUFGコインは、提携銀行がないことが弱点だ。

三菱UFJ銀行はこのプラットフォームビジネスによって「MUFGウォレット」を利用する提携銀行を開拓し、地銀を囲い込んで、みずほ銀行などとの競争で優位に立ちたいと考えているのかもしれない。

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