しかし、街を見渡すと、いまだ歩道を走る自転車は数知れず、左側通行も徹底されていない。なぜか? 疋田さんは「日本の自転車教育が、ほぼ小学校のみで実施されていることが大きい」と指摘する。というのも、小学生には「例外」があるからだ。
道交法によると「13歳未満の児童・幼児、または70歳以上の高齢者、または車道を通るに適さない障害などを有する場合」、自転車は歩道も走ることができると規定されているのだ。
「多くの人は、小学生の頃に、自転車の交通ルールを教わるが、そのときにこの例外を覚えてしまいます。『なるほど、自転車は歩道を走るのか!』と、小学生ルールを覚えたまま、アップデートされずに大人になってしまうのです」(疋田さん)
とくに若い人ほどクルマの免許を取得する人が減っているため、小学生以降、道路交通法を学ぶ機会がなくなりがちだ。そのため、「自転車も車道の左側を走る」というルールを学ぶ機会がないまま成長する人が多くなっている面もあるだろう。
ちなみに道交法では13歳未満や、高齢者でなくとも車道を通るのが特に危険であり、歩道を通ることがやむをえない場合も歩道を走ってもいいことになっている。
ただし、「歩行者の通行を妨げないような速度と方法」で走ることと決められており、徐行(警察庁によると時速7.5km以下)で走ることと、決められている。
クロスバイクは機能も値段もいいとこ取り
いずれにしても、自転車も自動車も、すべて「車道の左側を走る」のが基本。自転車通勤中に自らの身を守り、誰かを傷つけないためにも、覚えておきたいルールの第1ステージだ。
第2ステージは、「自転車通勤にふさわしい自転車とは」だ。
初心者があらためて自転車をイチから選ぶなら、オススメなのが「クロスバイク」だという。クロスバイクとは、一般にまっすぐな握りやすいハンドルがついた、やや前傾姿勢になって乗れるタイプの自転車のこと。かつて流行ったマウンテンバイク(MTB)とツール・ド・フランスの選手たちが乗っているようなドロップハンドルのついたロードバイクの「いいとこ取り」したスポーツ自転車だ。
これを選ぶメリットは「乗りやすいうえに、しっかりスピードが出る」に尽きる。
たとえばママチャリの場合は、乗りやすく安価だが、「重さ」という欠点がある。女性がスカートでも乗れるように設計されているため、ハンドルとシートを結ぶ「トップチューブ」と呼ばれるフレームがない。その分、強度が弱まるので、他の部品を肉厚にせざるをえない。加えて低価格を保つため、鉄などの丈夫だけど重い素材も、多く使う必要がある。
ママチャリのような重い自転車は、当然、スピードが出にくい。「車道を走る」ことがルールと考えると、これは致命的。クルマやオートバイが走る中、あまりに低速で走る行為は、他者に迷惑になるからだ。交通の流れに乗れず、ジャマもの扱いされる。
つまるところ、ママチャリはゆっくりと走って近所への買い物などに使う、「ちょい乗り」の乗り物。電車通勤にかえてスイスイと車道を走って出勤するには、あまり向いていない。
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