「そのうえ、ママチャリはどっしりと腰を掛けたようなスタイルで漕ぐ。安定しているようで、重心がほとんどお尻に集中してしまうため、すぐにお尻が痛くなる。つまり『長時間乗る』ことにも向いてないんです」(疋田さん)
しかし、クロスバイクは、ママチャリのようなデメリットが皆無だ。まず重量はママチャリの半分程度。圧倒的に軽いから、速さが出やすい。しかも前傾姿勢で体全体を使って漕ぐスタイルになる。力を逃さずに自転車の推進力にしやすく、また速さにつながるわけだ。加えて、前傾姿勢は体重をお尻だけじゃなく、両手にも分散できるため、長時間乗っても疲れない、というメリットもある。
「それならロードバイクが最強だろ!」と、さらに前傾姿勢になった人もいるかもしれない。確かにロードバイクは圧倒的に軽く、スピードも出る。しかし、ハンドルの感度が良すぎて乗りこなすのが大変なうえ、スピードが出すぎて危険を感じることがある。何より、価格が高い。10万円前後からスタートして、100万円を超え、軽自動車が1台買える値段のものまである。5万円前後くらいから質の高い製品が揃うクロスバイクが、やはり初心者には適していそうだ。
ヘルメットで「ちゃんとした自転車乗り」を誇示
バイク以外の装備も必要だ。絶対不可欠なのがヘルメット。オートバイなどと違って、法律で着用が義務付けられているわけではないが、言うまでもなく事故にあって頭を強打したら、死亡につながるほどの事態になる。実際、警視庁の2014年の調査によると、自動車乗車時の事故のうち、約65%が頭部損傷によるものだ。法律がどうのという話ではない。安全安心のために、必須のアイテムといえるだろう。
加えて、自転車通勤でヘルメットを強く推す理由はもう一つある。
「ヘルメットをかぶっていると、クルマを運転しているドライバーが、『あいつはまともな自転車乗りだな』と認識してくれる。このメリットは大きい。ドライバーが『なんだか速い自転車』として見てくれるようになる。『いいや。先行け、先行け』などとあきらめてくれます(笑)」(疋田さん)
同じ理由で「赤色フラッシャー」も身につけたい。赤色に点滅するLEDライトが付いた点滅灯で、簡単にフレームやヘルメットの後頭部に取り付けることができる。これを2~3つ付けて、点滅させれば、視認性がぐんとアップする。ドライバーから「お、自転車がいるな」とわかりやすくなるし、少なからず「意識の高い自転車乗りだな」と認識も変わるはずだ。自転車「通勤」であることを考えると、帰路は日が暮れていることが多い。必須のアイテムだといえる。
キメキメのスーツを着込んで、スタイリッシュなロードバイクにまたがる――。頭の中で、そんなおしゃれな自転車通勤のスタイルを思い描く人もいるだろう。
しかしそれは、頭の中だけにしておいたほうがよさそうだ。
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