米国8月雇用20.1万人増、市場予想を上回る 「米中貿易戦争」の影響は今のところ限定的か
[ワシントン 7日 ロイター] - 米労働省が7日発表した8月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が20万1000人増となり、前月から伸びが加速した。市場予想の19万1000人増を上回った。
時間当たり平均賃金は前年比で2.9%上昇と、2009年6月以来の高い伸びを記録した。米経済が今のところ、米中貿易摩擦の高まりの影響を免れているとの見方を後押しした。
時間当たり平均賃金は前月比では0.4%(10セント)上昇。7月は0.3%上昇していた。賃金の伸びの加速は、労働市場の引き締まりを明示している。米連邦準備理事会(FRB)が9月25-26日の連邦公開市場委員会(FOMC)で今年3度目となる利上げを決めるとの市場の見方が固まる材料だ。
賃金の伸びは労働市場にとりいわゆるアキレス腱となっていたが、8月に上向いたことは、インフレ率が年内、および来年初旬はFRBの目標である2%近辺で推移し続けるとのエコノミスト予想と矛盾しない。
BNYメロン(ボストン)のシニア・グローバルマーケットストラテジスト、マービン・ロー氏は「今後これまでの賃金上昇が一部反転するようなことがあったとしても、現在はFRBが掲げるシンメトリック(対称的)な2%のインフレ目標が支持される水準にある」とし、「市場では今月のFOMCでの利上げが完全に織り込まれている」と述べた。
就業者数は、労働人口の伸びに対応するためには月12万人増える必要があるとされている。
6月と7月の就業者数は合わせて5万人分下方改定された。
失業率は前月から横ばいの3.9%。市場予想は3.8%だった。一方、現在は職を探していないが働く用意のある人(縁辺労働者)や正社員になりたいがパートタイム就業しかできない人を含む広義の失業率(U6)は0.1%ポイント低下し7.4%と、01年4月以来の低水準をつけた。
米国は中国以外にも、欧州連合(EU)やカナダ、メキシコなどの主要な貿易相手国と報復関税の応酬を繰り広げている。アナリストらは、米政権の1兆5000億ドル規模の減税政策と財政出動によって米経済は貿易摩擦の影響から守られていると述べる。また、これまでに導入された輸入関税は米経済のごく一部にしか影響を与えていないとみている。ただトランプ米大統領が、輸入関税を課す中国製品を追加した場合、状況は変わるかもしれないと警告する。
米中両国は7月上旬以降、合わせて1000億ドル相当の製品に報復関税を課した。新たに2000億ドル規模の中国製品に関税を課す計画について米政権は6日まで一般から意見を募集してきた。
トランプ氏は、海外勢による不正な競争にさらされている米産業を守るとし、今年初めから海外の鉄鋼やアルミニウム、洗濯機、木材、太陽光パネルに輸入関税を導入している。
米中間の通商問題について、SSエコノミクス(ロサンゼルス)の首席エコノミスト、Sung Won Sohn氏は「すべての対中関税措置が発動されれば、大幅なレイオフは避けられない」との懸念を示した。
ただ一部アナリストは、トランプ政権が打ち出した大型減税と歳出拡大策が米経済を通商を巡る問題から守る盾のような役割を果たしているとも指摘。ナロフ・エコノミックアドバイザーズ(ペンシルバニア州)の首席エコノミスト、ジョエル・ナロフ氏は「減税と歳出拡大策で一種の高揚した状況が作り出される中、年内さらには来年上半期に労働需要が衰えると考える理由はない」と述べた。
雇用コンサルティング会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスが6日発表した8月の米企業の人員削減数は、輸入関税に関連した業界で521人だった。一方、鉄鋼生産業で採用者数が359人増加し、雇用全体への影響を抑制した。
雇用統計は、最近の製造業やサービス業の統計と合わせ、トランプ氏の保護主義的な通商政策の経済への影響が今のところ限定的であることを示す。第2・四半期国内総生産(GDP)は年率で4.2%増と、第1・四半期(2.2%増)の2倍近いペースで伸びた。
雇用統計の内訳は、製造業が3000人減。17年7月以来初めて減少した。7月は1万8000人増加していた。自動車が約5000人減となったことが主な押し下げ要因となった。これについてバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(バンカメメリル)のエコノミスト、ジョセフ・ソン氏は「自動車部門は夏の間は整備のために工場が閉鎖されることがあるため、雑音が混じりやすい」との見方を示した。
雇用は機械、コンピューター、電子機器、家具でも減少した。
一方、建設業は2万3000人増。7月は1万8000人増加していた。卸売りは2万2400人増、専門職・企業サービスは5万3000人増、スポーツ用品・趣味関連は9200人増となった。
ただ小売は5900人減。政府部門も3000人減となった。
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