CO2削減の切り札!「地中封じ込め」とは何か 日本でも始まった「温暖化・異常気象」対策

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

EORではない純粋CCSの代表格は、ノルウェーの石油会社エクイノール(2018年5月「スタットオイル」から社名変更)の2つのプロジェクトだ。北海海底下の貯留層に、過去10数年にわたって、それぞれ年間70万~100万トンのCO2を圧入してきた。現在3つ目のプロジェクトの開発を検討中で、ここにはノルウェー国内だけでなく、欧州諸国からもCO2を受け入れる計画だという。

わが国でも、電力・石油・エンジニアリングなど35社が出資する日本CCS調査(株)が、経済産業省(今年度からはNEDO)の委託を受けて、北海道の苫小牧で日本初の実証プロジェクトを実施している。

製油所の水素製造装置から発生するCO2含有ガスからCO2を分離・回収して、苫小牧沖の海底下約1000mと約2400mの2つの貯留層に、CO2を圧入する。2016年度より年間10万トンのペースで圧入を開始し、これまでに累計20万トンを超えるCO2を貯留した。

この実証事業は今年度いっぱいでいったん終了するが、ここで得られた知見をベースに2020年代に本格的CCSの実用化を目指す、というのが国の方針だ。それに向けて、経産省と環境省の共同事業として、日本CCS調査がCO2貯留適地調査を行っている。

CO2を1億トン(中規模の火力発電所1カ所から排出されるCO2の40年分程度に相当)以上貯留可能な地域を3カ所程度特定する計画だ。

日本におけるCCSの課題は、コスト高と、大規模で安全な貯留場所を確保できるかという点だ。

CO2を分離・回収する方法は、アルカリ性溶液を使った化学吸収法が一般的だが、工程数が多く、かつエネルギーを多量に必要とするため、コスト高となる。エネルギーやコストの低減が可能な技術やシステムの開発が必要だろう。

貯留場所については、海外では生産の終了したガス田を利用するケースが多いが、日本では、最初から地層調査を行い、新規に施設を建設しなければならない。コストも掛かるし、地域住民や漁業関係者の理解も必要だ。そもそも、地震大国日本で大規模なCCS施設を建設することは難しいとの見方も根強い。

上述のCO2貯留適地調査に期待したい。

CO2フリー水素へ、もう1つのアプローチ

CO2削減のためには、日本が国策として進める「水素社会」の実現も有効な手段となる。

そして、CO2フリー水素の製造方法としては、再エネ電力による水の電気分解、廃棄物系バイオマスの発酵、光触媒を使った水の分解などがあり、これまでリポートしてきた。

化石燃料からの水素製造ではCO2を排出するが、その場合でもCCSを活用すればCO2フリーにすることが可能だ。

日本では、CCSのコストが高いことから、あまり現実的とは言えないが、条件に恵まれた海外でCO2フリー水素を製造して輸入することは十分考えられる。中東の油田地帯で、捨てられる随伴ガスを使って水素を製造し、上記のEORを活用してCO2フリー化して輸入することなどは、大いに有望だろう。

実際に、海外の未利用エネルギーからCCSと組み合わせてCO2フリー水素を製造し、日本に運ぶサプライチェーンの実証事業が始まっている。次回はそれをリポートする。

西脇 文男 武蔵野大学客員教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

にしわき ふみお / Fumio Nishiwaki

環境エコノミスト。東京大学経済学部卒業。日本興業銀行取締役、興銀リース副社長、DOWAホールディングス常勤監査役を歴任。2013年9月より武蔵野大学客員教授。著書に『再生可能エネルギーがわかる』『レアメタル・レアアースがわかる』(ともに日経文庫)などがあるほか、訳書に『Fedウォッチング――米国金融政策の読み方』(デビッド・M・ジョーンズ著、日本経済新聞社)がある。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事