「摸倣する心」を持てば社会で生きやすくなる 社会で生き延びるための「発達障害の仕事術」

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モチベーションが低下した状態から再びタスクの処理に戻る場合ですが、邪魔者が山ほどいると思います。机の上は片づいていないし、メールは返していないし、洗濯物も溜まっているでしょう。それらに触ったら終わりです。わかりますね?

僕がよくやっている机の上を5秒で片づける「儀式」を伝授しますので、よく覚えておいてください。

(1)まず机の上に腕を置きます。
(2)次に、その腕を右もしくは左に大きくスライドさせます。
(3)大量に物が落下しますが、作業スペースだけは確保できるはずです。

後から拾えばいいんです。

このハックは、「やってやったぜ!」という爽快感がすさまじいです。「俺はここまでしてやるのだ」という脳の中に湧き出すあれが、あなたの手を動かします。

机の上に腕を置き、腕を右から左にスライドさせる(イラスト提供:毎日が発見ネット)

長期タスクをやり遂げる第二のポイントは、「ハマる状態を作り出す」ことです。長期タスクは取り掛かった序盤が圧倒的に苦しいです。作業効率は悪いですし、全体像も見えないまま、とにかく手を動かさなければならない。進捗も達成感もほとんど感じられないでしょう。それを突破して、全体の見通しが立った段階を僕は「千里の半ば」と定義しています。

どうすれば「ハマる」状態を作り出せるのか

とにかく、この千里の半ばまで到達することが一番大事です。僕や皆さんが心ならずも爆死した長期タスクを考えてみると、たいてい「半ば」まで到達していないと思います。逆に言えば、「半ば」までやり込んでいたなら「今さら後に引けないんだ、すでに時間と金をぶっこんでしまったんだ……」というあれが発生しているはずですし、やめるのもそれはそれで難しいはずです。

この心理を利用することで、意図的に「ハマる」を作り出すことができます。皆さんはギャンブルをしたことがありますか。例えば、パチンコなんかをやったことがある人はわかると思いますが、人間が強力なモチベーションを手に入れるのは「取り返したい」というときです。「欲しい」という感情より「取り返したい」という感情のほうが、何十倍も強いのです。

『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

卑近な喩えで恐縮ですが、パチンコで3000円負けているときに携帯電話が鳴り、気の置けない友人から楽しい飲み会の誘いが入ったら、僕はおそらくパチンコを打ち切ってもっと楽しい飲み会に出ると思います。しかしこれが3万円負けている状態だったら、自分の判断がどうなるかは自信が持てません。ギャンブルは負ければ負けるほど、「損失を取り返したい」という心理が強くなるのです。

そういうわけで元来衝動性が強く、依存に陥りやすい僕は現在ほとんどギャンブルをやらなくなったのですが、この「悪しき習性」を良い方向に利用することが可能であることに気づきました。いい意味での「サンクコスト効果」と言ってもいいかもしれません。

これを具体的なメソッドに落とし込むにはどうしたらいいか。簡単です。パチンコは500円ずつの投資がどんどん積み重なって、ついに後に引けない額になる。これと同様に、毎日、あるいは毎週少しずつコストの投下を繰り返していくのです。これは金銭的コストと労力的コストの両方を含みます。というよりは、この2つを組み合わせることでより効果的に強化することができます。

例えば、参考書を買い揃えるなら一時に全てを購入するのではなく、1冊ずつ揃えていく。また、学習も思い立って1日丸ごと勉強するのではなく、1日 30 分だけやる。ほとんどそれが無為に終わったとしても、繰り返すことが重要です。

【まとめ】
・仕事を始めるときは、「儀式」をうまく使え
・とにかく、「千里の半ば」までやれ。そうすれば自然にやめられなくなる

 

借金玉(しゃっきんだま)
1985年生まれ。診断はADHD(注意欠陥多動性障害)の発達障害者。幼少期から社会適応が全くできず、登校拒否落第寸前などを繰り返しつつギリギリ高校までは卒業。色々ありながらも早稲田大学を卒業した後、何かの間違いでとてもきちんとした金融機関に就職。全く仕事ができず逃走の後、一発逆転を狙って起業。一時は調子に乗るも昇った角度で落ちる大失敗。その後は1年かけて「うつの底」から這い出し、現在は営業マンとして働く。

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「毎日が発見ネット」編集部
「まいにちがはっけんねっと」へんしゅうぶ

自身の健康&親の介護が気になり始めた世代に役立つ情報が満載の、雑誌「毎日が発見」。そこに掲載された健康情報やレシピに加え、介護や夫婦問題の当事者のリアルな声をお届けします。

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