JVCケンウッドで異例のCEO復帰劇 3期ぶりの最終赤字となり、またもや希望退職募集

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縮小

 だが、こうした一過性の要因だけの問題だとしたら、まるで時計の針を戻すような異例の人事や、大規模な人員削減に踏みこむ必要はなかったはず。実際、こうした不採算の2013年モデルを上期で早々に収束させ、原価対策の済んだ2014年モデルを前倒しで投入するなど、この点の対策はすでに進んでいる。同社が危機感を強めるのは、カーエレ、ビデオカメラとも急激な市場縮小に見舞われているという点にある。

 同社が最大の成長ドライバーだと位置づけてきたカーエレだが、部門営業利益は前々期の63億円から前期25億円、そして今期は赤字転落見通しと、右肩下がりを続けている。カーエレは日本勢を中心とする寡占市場だが、その日系メーカー間でのシェア争いの結果、単価は下落基調が続いている。また自動車販売店でカーエレを装着する「ディーラーオプション」の価格攻勢も激しく、同社が強みの市販カーエレの市場自体が縮小している。海外市場も低価格帯ではスマートフォンとの競合が始まっており、価格破壊は進む一方だ。

 スマホへの代替がより深刻なのがビデオカメラだ。世界市場でみても3年前から台数は半減しており、縮小基調に歯止めがかかる見通しは一向に見えない。平均単価も3年前は国内平均で6万円だったものが、今では3万円台まで落ち込んでいる。

同社再建は時間との争いに

 こうした事態に同社も手をこまぬいている訳ではない。目下、こうした民生品から業務用システムへのシフトを急ぐ。今では収益柱となったデジタル無線システムは米国での官公需向けで一定のポジションを占めており、カメラ関連でも監視カメラや業務用ビデオカメラに経営資源を傾ける。車載カメラの開発など、カーエレとカメラの技術を融合した「カーオプトロニクス」市場の開拓にも意欲を示す。

 急速に進む民生品市場の縮小。はたして業務用へのシフトがそれに追いつくのだろうか。同社の再建は文字通り時間との勝負になってきたといえるだろう。2002年に経営不振だったケンウッド(当時)の社長に就任して以降、不採算事業からの撤退戦のリーダーを務めてきた、河原CEOの手腕が求められる局面といえそうだ。

風間 直樹 東洋経済コラムニスト

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かざま・なおき / Naoki Kazama

1977年長野県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒、法学研究科修了後、2001年東洋経済新報社に入社。電機、金融担当を経て、雇用労働、社会保障問題等を取材。2014年8月から2017年1月まで朝日新聞記者(特別報道部、経済部)。復帰後は『週刊東洋経済』副編集長を経て、2019年10月から調査報道部長、2022年4月から24年7月まで『週刊東洋経済』編集長。著書に『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』(2022年)、『雇用融解』(2007年)、『融解連鎖』(2010年)、電子書籍に『ユニクロ 疲弊する職場』(2013年)など。

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