原油価格が年末にかけて一段と上昇するワケ 1バレル=65ドル以下には下がりにくい?
さらに、IEAは、世界の原油市場について、「旺盛な需要と一部産油国の生産に関する不透明感から、年末にかけて需給がタイト化する可能性がある」との見通しを示している。IEAのファティ・ビロル事務局長は、「原油市場が年末にかけて引き締まるとの懸念は確実にある」とし、「非常に旺盛な需要の伸びが引き締まりを招く可能性があることや、ベネズエラの生産が崩壊していることも大きな問題」と指摘している。
さらに「ベネズエラの生産は過去2年のうちに半減しており、中東を含む産油国にも生産の脆弱性が見られる」としており、需給がさらに引き締まる可能性があるとみられている。アメリカがイランへの経済制裁を行うこともさらなる市場への原油供給が減少する要因だ。
2020年前半にかけて再度「1バレル=100ドル時代」も
これらの状況を受けて、原油価格が高騰するリスクがあると考えたアメリカのトランプ政権は、戦略石油備蓄(SPR)の放出を表明した。しかし、これもさほど効果はないだろう。
というのも、SPRの放出は、将来の買い材料だからである。最近はアメリカの生産量が増加しており、SPRの重要性は以前ほどではなくなっているものの、結局、放出された分はいずれ穴埋めされるからだ。これが将来の買い材料となるわけである。さらに、シェールオイルの増産が想定ほど伸びなければ、11月6日の中間選挙を前に、原油価格の抑制に失敗する可能性もありそうだ。
新興国などを中心に、世界的に景気はやや鈍化の傾向を見せ始めているが、アメリカの景気は絶好調である。これを反映してか、同国内の石油製品需要は最新週で日量2213万バレルとなり、ほぼ過去最高水準に達している。
これにより、石油製品需要に対する在庫は16日分と、原油価格が147ドルを付けた2008年とほぼ同じ水準である。同国内の石油需給は歴史的な逼迫状況にあるわけだ。原油価格が高くて当たり前なのである。
米中貿易問題やイラン経済制裁の行方など、不透明要因は多いが、それでも世界の石油需要は確実に増加し、生産量は高コストから伸び悩んでいくだろう。
実は、原油高は世界最大の産油国になったアメリカにとってもよい状況であるといえる。筆者は、米国株のピークを2019年後半とみているが、直近の過去の米国株とWTI原油のピークを付ける「タイムラグ」はおおむね6カ月から9カ月である。したがって、WTI原油が真のピークを付けるのはまだ先ということになる。WTI原油は年内に80ドル近くまで上昇するだろう。そのうえで、2019年後半から2020年前半ごろに100ドルまで上昇していても驚いてはいけない。
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