イタリア「橋崩落」どうして防げなかったのか 閉鎖や規制は最終手段と考えていた可能性

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自動車やトラック数十台が数千トンのコンクリート片とともに川底に沈んだ今回の事故を受けて、アベネンテ議員は、橋の状態が劣悪だと皆が認識していたと述べて、こう付け加えた。「あそこを通るときは、アクセルを踏み込んでいた」

遅くとも1980年代には、橋から落ちてくる破片によって自家用車が損害を受けた場合に補償を申請するための書類が存在していた、と年金生活者のサルバトーレ・ロレフィーチェさんは語る。

橋の閉鎖や通行制限の必要性にまで考えが及ぶ関係者が誰もいなかったとみられる点についても、今回の大惨事が起きた1つの要素として、ジェノバ検察当局が捜査を進めている。

予防的措置として閉鎖するには、この高速道路が重要すぎると認識されていた可能性を疑っているか、と問われたパオロ・ドビディオ検察官は、「私見かもしれないが、それは捜査の範疇ではない」と答えた。

閉鎖をするには重要すぎる橋だった

イタリアのポピュリスト新政権は、ミラノ証券取引所に上場するインフラ企業アトランティア<ATL.MI>傘下のアウトストラーデに対する監督が不十分だったと前政権を批判。橋の重要性から見て、閉鎖や交通規制は最後の手段だと考えていた可能性が高い、と主張している。

崩落した高架橋は、ジェノバ港と他の地域を結び、町の両端をつなぐもので、アウトストラーデが管轄する有料道路の中でも、最も交通量の多い部類に入った。

「この重要性が高いことから、前政権が部分的であっても、閉鎖は最終手段だと考えていた可能性が高い」と、インフラ整備交通省はロイターに文書で回答した。デルリオ前インフラ整備交通相は、現段階で、コメントの要請に応じていない。

地元住民のコーディネーターを努め、橋の崩落によって自宅からの避難を余儀なくされているジュジー・モレッティさんは、橋の安全を守るため努力しているとの管理会社の説明を信用していた、と話す。

崩落する可能性は、「一度も考えなかった」と語るモレッティさん。「長い雷鳴のような、忘れられない音を聞いた。テラスにいた私のところに娘が飛んできて、橋が崩壊したと言ったとき、どの橋かと尋ねたぐらいだ」

7月の会合では、アウトストラーデの保安幹部であるマウロ・モレッティ氏が、1960年代の完成時には、最先端技術を使ったジェノバの誇りと考えられていたこの橋を、どのように海風が腐食しているかについて、住民に説明した。

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