イタリア「橋崩落」どうして防げなかったのか 閉鎖や規制は最終手段と考えていた可能性
昨年、シチリア島南部のアグリジェント近郊にある、今回崩落したものと同時代に建設された橋がぼろぼろになっていることが確認された。この橋も、モランディ氏のデザインだ。
だがこの時は、住民の支持を得た環境団体マレアミコが、橋の安全性を主張する自治体運営者の言い分を信用しなかった。マレアミコは地元検察当局に懸念を伝え、2017年3月に捜査が始まった。
マレアミコによると、橋の塔からコンクリ片が落下していたのにもかかわらず、橋を運営するアナスはアグリジェントの高架橋が崩落する恐れはないと請け合った。そこでマレアミコは、検察当局に朽ちた塔の映像を送ったのだ。
「検察が捜査を開始した直後、アナスは高架橋を閉鎖した」と、マレアミコの担当者は話す。
アナスの広報担当者は、捜査を受けて橋を閉鎖したのではないと話す。同社は当時発表した声明の中で、以前から大規模な補修工事を予定していたと主張。数カ月後、橋の一部通行が、軽量車両限定で再開された。
だが地元検察当局トップであるルイージ・パトロナッジオ氏の話はこれとは異なる。「橋が崩落する可能性があるとみて、介入した」と、同氏は語る。「アナスに連絡すると、技術者を説明によこしたが、その技術者らが、橋は危険だと断言した。そこで、われわれの助言をもとに、アナスは橋を閉鎖したのだ」
ジェノバでは、担当検察官のドビディオ氏が、これまで橋の状況について捜査するよう、正式な申し立てを受けたことはないと言う。
崩落を予見することは困難
この大惨事の刑事責任を負うべき人物がいるか地元検察官が捜査しているのと並行して、イタリア政府は、国内全土のインフラ、特にモランディ氏のデザインによる老朽化した橋を中心に、安全確認を行うと表明した。
ベニス大学で構造分析を専門にするジャンカルロ・ビロッティ教授は、老朽化しつつも明確な構造的問題点が表面化していなかったジェノバのような橋の場合、崩落を予見することは難しいと話す。「どうしたいというのか。すべての高速道路の橋を閉鎖するのか」
(Stefano Bernabei記者, Elisa Anzolin記者、Valentina Za記者、翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)
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