日本人が治すべき「テクノロジー怖い」症候群 GAFAを知れば「新しい生き方」が見えてくる
一方で、グーグル、フェイスブック、アマゾンは徹底的にビッグデータを収集して、ユーザーを自然にうまく誘導しています。これは、ミシェル・フーコーが指摘した「環境管理型権力」に当たります。
権力には、法律や道徳で命令する「規律訓練型権力」と、知らないうちに誘導されている「環境管理型権力」があります。たとえば、アマゾンから「これを買え」と命令されるのが規律訓練型権力だとすれば、「あなたにおすすめがあります。これ欲しいでしょ?」と誘導するのが環境管理型権力。AIでデータ分析することによって、環境管理型権力が高度に進化していくというのが今の流れです。
ところが問題が起きました。フェイスブックの情報漏洩です。アメリカでは大騒ぎになり、ザッカーバーグCEOが議会の公聴会で吊るし上げられました。さらに、EUではデータ保護規則を採択。ビッグデータを収集・分析し、フィードバックするという方法には歯止めがかかるかもしれません。
第五のGAFAは中国政府
そんな中、まったく気にせず突き進んでいるのが中国です。デジタルレーニン主義なんていわれていますが、一企業にやらせるどころか、国家が音頭を取って情報収集しています。
計画経済は市場の原理に負けた、というのは有名な話ですよね。ニーズを考えずに官僚の計画に沿って生産していれば、売れなくなるのは当たり前。しかし、ニーズ自体をAIに基づいて事前に完璧に分析できるなら? これ、実はドイツ政府が推進中の「インダストリー4.0」(IoTやAIを用いた製造業の高度化を目指す国家プロジェクト)と同じなんです。
インダストリー4.0と社会主義の計画経済を合体させれば、超高度に緻密な経済のシステムが成立しうるのではないか。中国はそんな壮大な実験をやっている。このままいくと、第五のGAFAは中国政府ということになるかもしれません。現に、GAFAの次はBAT――百度(バイドゥ)、阿里巴巴(アリババ)、騰訊(テンセント)ともいわれています。
中国は自国内で回していますが、GAFAはアメリカのテックジャイアントではなく、もはや無国籍でどこの国の企業かわからないという状態になっています。そして問題は、タックスヘイブンを悪用して自国に税金を納めないことですね。かつては国が産業支援すれば、その国にフィードバックされるものでしたが、今はありません。
GAFAは従業員も極めて少ない。知識集約型でシリコンバレーの極少数の従業員しかいません。一部の金持ち社員にしか還元されず、母国への発展には寄与しないのです。
日本も今後、なにを産業振興すればいいのかわからなくなっていくかもしれません。LINEを支援しますか? でもあれは韓国企業です。日立は? しかし、いまや多国籍化して役員会議はニューデリーやロンドンでやっています。かつて日本には企業城下町がありましたが、いまは工場は海外にあり、国内にはヘッドオフィスがあるだけですからね。
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