銀行ではお金の流れを学び、ビジネスをわかった気になっていたが、不確かな価値をどう伝えるかなど、実業で大事なものは何一つ身についていなかったのだ。
たぐいまれな熱意が、伊藤忠を動かした
そんな出雲に手を差し伸べたのが、伊藤忠商事だ。08年に同社が出資してくれた後は、それを後ろ盾に大企業の出資や協力が一気に進んだ。その後は、ANA,電通、新日石、清水建設など、どんどん話が進んだ。
「右へ倣え」の日本社会では、結局は価値を伝えるには、皆が価値を感じるものの「後ろ盾」が必要だった、ということか。日本で成功までのハードルが上がる要因だろう。
ただ、その1つ目の後ろ盾である伊藤忠を得られたのは、出雲がほとんどの会社から門前払いを食らう中、それでも価値があると信じ、発信し続けたからだった。「日本に営業に行っていない会社はない」と出雲は断言する。その結果、たまたま1社、伊藤忠のある商社マンが「僕も、本気でミドリムシやりますよ」と真剣にパートナーシップを検討してくれたのだ。
もっとも伊藤忠内でも、全く新しい領域で他社が見向きもしないミドリムシに投資をするという稟議を通すのは並大抵のことではなかったはずだ。「100人中99人には断られても、本当に正しいことをやっていればどこかに共感してくれる人はいる」その熱意が伊藤忠を動かしたのだろう。
その後、ユーグレナ社は、徐々に軌道に乗り始め、昨年(2012年)マザーズに上場を果たした。今年の10月には、ついに原点であったバングラデシュに事務所を開設した。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら