ANA機内食に登場する「世界初のパン」の正体 安心して食べられるバリアフリーパンとは?

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これまでコスモバイタルはグルテンフリーのパンを展開してきたが、どうしても市場が限られていた。そこで、アレルゲン対応や、ハラール(イスラム教において合法とされるもの)を始めとする宗教上の問題への対応など、あらゆる食の安心に応えることによって市場を広げようとした。その取り組みが、乗客一人ひとりの希望に沿った「ユニバーサルなサービス」を掲げるANAの考えと合致、今回の共同開発に至った。

ANAにとっても導入するメリットは大きい。同社は2017年度に約10万食のアレルゲン対応食を提供したが、アレルゲンの種類や宗教上の理由などによって提供する食材を変えてきた。今後パンに関しては、このバリアフリーパン1つでほぼすべてを賄うことができるようになる。

独自の低酸素焙煎で処理

パンの主成分は米粉と白インゲン豆。ともに独自の「低酸素焙煎」で処理しているため、添加物なしでも柔らかく膨らむ。低酸素常圧で焼く大型オーブンも独自開発し、パンの焼き方にまでこだわった。

生米に独自の低酸素焙煎を施して作られたコメパウダー。これを通常の米粉と配合する。水と混ぜたときに粘性が増し、それが添加物の代わりになる(記者撮影)

記者も実際に食べてみたが、米粉パン特有の“重さ”がなく、思った以上にふっくらしている。ほかに含まれているのは、いちじくとナツメヤシ、オリーブ油、米酢、ドライイースト、塩のみ。コメの本来の甘みもあり、何もつけなくてもほんのりとした甘さを感じた。

グルテンフリーを実現するために、品質管理は徹底している。不純物が混ざらないように素材の仕入れから管理を徹底。コスモバイタルの東京・池袋の本社に無菌ルームを作り、パンを製造・出荷している。現状の生産能力は1日400個だ。

パンの製造・出荷過程では、ANA独自の衛生管理基準が100項目近くある。実は両社は、今回の出荷まで1年半近い歳月を費やしている。管理基準を満たすための環境整備のほか、味の向上のため、大型オーブンも3度作り替えたという。

こうして完成したバリアフリーパンは、ANA機内での展開が中心となるが、池袋で結婚式場やレストランを展開する「リビエラ東京」でも買うことができる。価格は1個300円。「米粉パンはどうしても価格が高くなってしまうが、独自の低酸素焙煎技術で製粉コストを抑えることができる」(パンを開発したコスモバイタルの吉岡久雄さん)。

多くの人が安心して食べられるパンは、訪日客などもターゲットになる。ANAの機内食から、日本発の新しいパンが世界に飛び立つかもしれない。

並木 厚憲 東洋経済 記者

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なみき あつのり / Atsunori Namiki

これまでに小売り・サービス、自動車、銀行などの業界を担当。テーマとして地方問題やインフラ老朽化問題に関心がある。『週刊東洋経済』編集部を経て、2016年10月よりニュース編集部編集長。

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