安倍首相はもう総裁選後の「改憲発議」へ邁進 各党も石破氏との「憲法論争」に注目するが

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自民党総裁選管理委員会は21日の第2回会合で9月7日告示・20日投開票の日程を正式決定した。ただ、別荘で夏休みをとっている首相はゴルフ三昧を続けており、正式出馬表明は来週以降に先送りする構えだ。首相サイドは「石破氏との討論対決の機会をできるだけ少なくする狙い」と説明する。これに対し、石破氏は21日、「(首相が討論に)なぜ応じたくないのか言ってほしい。国民に向けて語る機会を奪うことになる」と積極的な論戦を求めた。

総裁選の争点を改憲問題に絞りたい首相にとって、石破氏が求める課題ごとの公開討論実施は「ラッキーパンチを受けかねない」(側近)との不安がある。石破氏は「正直で公正な政治」を掲げて、解明が進まない「もり・かけ疑惑」を念頭に、首相の独善的な政治手法の是非を争点にしようとしているからだ。

ただ、首相批判を先鋭化させる石破氏の戦略には党内でも「個人攻撃の泥仕合になり、自民党全体の信頼も失われる」との批判がある。参院竹下派を石破氏支持でまとめようとしている吉田博美参院幹事長も21日の記者会見で「個人攻撃には嫌悪感がある」とあえて石破氏をけん制してみせた。総裁選管理委でも公開討論会の実施計画が議題となったが「たくさんやりたい人(石破氏)もあまりやりたくない人(首相)もいる」との指摘もあり、結論は27日の次回会合以降に持ち越した。

地方票で接戦なら「安倍改憲」は困難?

総裁選は議員票405票、地方票405票の合計810票の争奪戦となる。もちろん過半数を得た候補者が勝者となるが、今回は「首相の勝ち方が問題」(細田派幹部)となる。自民党内では「首相圧勝の定義」について、①合計得票で首相が石破氏にトリプルスコアに近い大差をつける、②地方票でも石破氏を圧倒する、との見方が大勢だ。

首相はすでに議員票の8割(約320票)程度を固めたとみられており、地方票で7割超(約280票)なら合計600票前後でほぼトリプルスコアとなる。その一方で地方票が互角の戦い(双方が200票前後)となれば合計でもダブルスコア以下となる計算だ。首相サイドも「地方票で接戦になれば、党内での安倍1強も揺らぎ、『安倍改憲』での強行突破も困難になる」(細田派幹部)と不安を隠さない。

石破氏が首相の個人攻撃を続けるのは「地方票狙い」とみられている。最新のメディアの世論調査でも「首相にしたい政治家」で石破氏が首相を上回っており、「国民レベルでは安倍政治への批判が根強い」(石破派幹部)との判断からだ。地方票のかなりの部分が“ノンポリ層”とみられており、「それを反安倍に誘導できれば、地方票で首相を上回る可能性がある」(同)という読みだ。

こうした石破氏の戦略について、党内からは「後ろから鉄砲を撃つようなもの」(執行部)との反発も渦巻く。「骨太の政策論争より、個人攻撃を優先するなら野党と同じ」(細田派幹部)という理由からだ。ただ、首相サイドによる「総裁選後は人事などで石破派を締め上げる」などの“口撃”には、石破氏自身が「パワハラだ」と色をなして反撃する一方、党内良識派からも「首相に対する贔屓の引き倒しになりかねない」(首相経験者)との声が広がる。

総裁選投開票まであと4週間。9月7日の告示後も首相が現状のような「なりふり構わぬ“石破氏殲滅(せんめつ)作戦”を展開する」(二階派幹部)のか、それとも、「大人の対応で、横綱相撲に転じる」(岸田派幹部)のか。「3選確定」とされる首相が狙う「圧勝」にはまだまだ不確定要素が少なくない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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