外国人が飛びつく「日本モノ」は何が違うのか トーキョー・オタク・モード流の売り方
また、モリサワ氏も「日本には、弱虫の主人公がさまざまな経験を通して精神的に成長したり、弱いからこそ仲間と協力して何かを成し遂げたりする物語がたくさんあります。筋肉ムキムキのアメリカンヒーローに自己投影できなかった人たちから、『日本のアニメは自分たちのような強くない人たちのことをきちんと描いてくれた、だから日本のアニメやマンガが好きになった』という話をよく聞きます」と指摘する。
とはいえ、日本ポップカルチャーは海外においていまだマイナーで、市場もニッチ。しかし、面白い作品はSNSで話題となり、その作品を好むファンの元へと届く。ニッチな市場が世界中にあるため、ビジネスとして成り立つのだ。グローバル化とソーシャル化が進んだことが、日本のコンテンツ業界の多品種生産モデルに有利に働いていると言えるだろう。
文化の輸出や普及は成果が出るまでに時間がかかる
日本のコンテンツ産業の海外市場規模は2016年時点で約64兆円。今後アジアを中心に市場が拡大し、2022年には約81兆円になると予想されている。「クールジャパンという括りの中でも、ポップカルチャーに限って見れば順調だ」というのがトーキョー・オタク・モードの見解だ。
「それに、文化の輸出や普及は成果が出るまでに時間がかかるもの。こうした長い期間を要する取り組みができるのは政府の強みです。それなのに、数年で評価するのは少し可哀想というか、本末転倒ではないでしょうか。市場が拡大している現在は、投資スタンスを崩すべきではないと思います」(小高氏)
ただし、トーキョー・オタク・モードが順調に利用者を増やしているのは、クールジャパン機構や戦略があったから、とも言い切れない。同社の場合、日本のコンテンツや商品の中でも比較的しっかりとした市場があるアニメなどを取り扱っているというバックグラウンドに加えて、SNSというチャネルがユーザー層とマッチしたというマーケティングの妙がある。だからこそ、政府から得た資金で物流施設などを立ち上げたことに意味があったわけだ。
とはいえ、そんな同社もその幅こそ減っているものの、赤字ではある。それを「成功」ととらえるか、「失敗」ととらえるか意見は分かれるところだろう。だが、クールジャパンを単なる事業ではなく、小高氏の言うとおり、「文化の輸出や普及」という目線で見るならば、長期的な視野に立った戦略や説明が必要ではないか。
こうした中、政府においてはやみくもに「ジャパンぽいもの」に投資をするのではなく、しっかりとした市場調査やマーケティングを行っている会社を見極めなければならない。同時に、「赤字=失敗」と単純に切り捨てるのではなく、何をもって投資回収したと考えるか、そのゴールをしっかり定めるべきだろう。
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