日本人は、なぜ「チョコミン党」になったのか 平成最後の夏に起きた「嗜好の変化」

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ミントなどのハーブや、刺激の強い食べ物がはやっている背景には「アジア飯」ブームの影響もあるかもしれない。唐辛子が利いたタイ料理、スパイスをたくさん使うインド料理、花椒のしびれる味の中国東北部の料理など、人気のアジア飯には、刺激的な味わいを楽しませる料理が多い。

しかも最近は、アジアから日本に移り住んだ人たちが、同郷の人たちを相手に開く店も増えていて、本格的な味が日本人の間でも人気である。料理にも、より刺激的な味を求める人たちが増えているのだ。

ストレス社会から爽快感を求める人も?

江戸時代まで肉食が禁止されていた日本で、近代以降も長らく好まれてきたのは、マイルドな味わいである。伝統的に使われてきたワサビや山椒も、たっぷり使うのではなく、アクセントとして利かせる程度だ。大航海時代にヨーロッパ人がアジアに持ち込んだ唐辛子も、肉食文化があったお隣の朝鮮半島では、品種改良で種類を増やし、キムチに不可欠なものとするなど、独自の唐辛子文化が育ったが、日本では七味唐辛子ぐらいでそれほど使い道が広がらなかった。そして、激辛ブームとなった1980年代半ばまで、唐辛子の辛さはあまり好まれなかったのである。

激辛ブームと、アジア飯のブームが重なるようにして起こり、しだいに日本人は刺激的な味に慣れ、やがてそういう味を好むようになっていった。ここ数年の肉ブームも、よりはっきりした味を求める近年の傾向を反映している。強い味を好きな人が、ミントの刺激とチョコレートの甘さが入り混じるチョコミント味を求めるのは、当然なのかもしれない。

もう1つ考えられる理由は、私たちが日々強いストレスにさらされていることだ。2度目の東京オリンピックの開催に向けて経済活動が活発になる一方、庶民の生活実感としては、先行きが不透明で不安な時代が続いている。自殺率も高く、鬱を患う人は珍しくなくなった。貧困問題も深刻である。

気候も激しくなっている。気象変動の影響で、今年の猛暑だけが特別なのではなく、年間を通じて気温のアップダウンが激しい。毎年のように水害や地震といった自然災害がどこかの地域を襲っている。

平成になってから、私たちは長い不況と厳しい気候変動の中を生きてきた。厳しい環境を生きる人たちが、強い味のチョコミントに手を伸ばす。刺激的な味と、はっきりした印象的な色合いのチョコミントスイーツの人気には、過酷な日々を生き抜こうという私たちの意志が隠されているのかもしれない。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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