仮想通貨が崩れると半導体価格も崩れるのか 半導体の「スーパーサイクル論」に異変?

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仮想通貨の価格が低迷している一方、ASICを開発・販売しているビットメインの業績及び評価は右肩上がりである。となれば、マイニングのプレーヤーが大きく異なったと表現するのが適当で、仮想通貨のマイニングに対する関心は大きく変化していないと見るべきだろう。

上場していることからエヌビディアの株価は仮想通貨の盛り上がりとともに上昇したが、今後、もしASICに市場関係者の関心が向かうとなれば、株価は上げ一服となる可能性はある。

実際、直近に発表されたエヌビディアの2019年第2四半期売上高は31億2000万ドルで、そのうち仮想通貨マイニングマシン向けGPUの売り上げはわずか1800万ドルにとどまった。そもそも全体の1割にも満たない売り上げだが、第1四半期の実績が2憶8000万ドルだったことや、終わった第2四半期も当初は1億ドルを見込んでいたことを想定すると、かなりネガティブなインパクトである。仮想通貨という思惑先行で上昇していた同社の株価は、仮想通貨向けマイニング向けGPUの売り上げの不振で、全体の業績以上にネガティブな印象を与えてしまっており、今後も株価の足かせとなるかもしれない。

仮想通貨向け半導体によるスーパーサイクル論に転機か

とはいえ、アメリカの半導体大手インテルが「2020年には500億台のデバイスがインターネットに接続する」と予測するなど、あらゆるものがインターネットで結ばれる IoT時代の到来や自動運転の開発などが「スーパーサイクル論」の背景にあり、市場規模の小さい仮想通貨マイニングの動向がスーパーサイクル論には影響を与えないと考える。

現在、ビットコインのマイニング報酬は約10分毎に12.5BTC支払われる。となれば、1日の報酬額は1800BTCとなり、1年間では65万7000BTCとなる。

仮に少し多めに見積もり、「1BTC当たり70万円」で計算すると4599億円だ。マイニングはビットコインだけではないうえ、価格が昨年末のように上昇すれば価値はより高くなるが、半減期などで報酬が減少することや価格のブレで収益性が読みにくいことを考慮すると、企業が数千億円の設備投資を行って事業化することは想像しにくい。それだけの市場規模しかない仮想通貨マイニング向け半導体の需要の増減が、「スーパーサイクル論」を左右させるのはさすがに無理がありそうだ。

田代 昌之 マーケットアナリスト

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たしろ まさゆき / Masayuki Tashiro

北海道出身。中央大学文学部史学科日本史学科卒業。新光証券(現みずほ証券)、シティバンクなどを経てフィスコに入社。先物・オプション、現物株、全体相場や指数の動向を分析し、クイック、ブルームバーグなど各ベンダーへの情報提供のほか、YAHOOファイナンスなどへのコメント提供を経験。経済誌への寄稿も多数。好きな言葉は「政策と需給」。ボラティリティに関する論文でIFTA国際検定テクニカルアナリスト3次資格(MFTA)を取得。2018年にコンプライアンス部長に就任。フィスコグループで仮想通貨事業を手掛ける株式会社フィスコデジタルアセットグループの取締役も務める。

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