仮想通貨が崩れると半導体価格も崩れるのか 半導体の「スーパーサイクル論」に異変?

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マイニングは、ブロックチェーンのデータとの整合性を取りながら記録する作業のため、膨大な計算処理が必要となる。決められた時間内で、この記録作業をいちばん早く終えると、報酬としてビットコインなど仮想通貨が支払われる。

仮想通貨創成期だった2010年の前半頃は、PCに詳しい個人が趣味と実益を兼ねて行っていたが、2016年あたりから、電気代が安い北欧やアジア内陸部などで、企業が莫大な資金を投資しデータセンター並みのパソコンなど周辺機器を駆使して事業として行うなど大掛かりな話となっている。

すでに日本国内では、GMOインターネットやSBIホールディングス、DMM、ネクスグループなどがマイニング事業を展開、または今後行うとしている。一方で、ビットコインの場合、マイニングによって入る報酬は、半減期という仕組みによって約4年に1回のペースで半減するため、半減期をまたぐタイミングで報酬は減少していく。長い目で見ると報酬は減少する可能性がある(価値が高まれば、その分報酬は比例して高まる)ことから事業化にはコスト削減など合理性が必要との意見が多い。

そのマイニングを行うにあたって、2017年辺りまで市場を席巻していたのが、エヌビディアやAMDが製造・販売していたGPUである。グラフィック・プロセッシング・ユニットというネーミングどおり、GPUはグラフィックを処理するために作成されたものである。3Dなどを高画質で描いたり、4K動画などの高画質な動画を描いたりさせるために使用されるのが本来の用途である。ところが、その計算能力の高さから、仮想通貨のマイニングに利用されたというわけだ。

「GPU」vs.「ASIC」の覇権争いはASICの勝利?

一方、ASICは電子部品の1つで、特定の用途向けに複数機能の回路を1つにまとめた集積回路の総称であり、2013年あたりからマイニング市場に参入している。

ASICの大手企業は、中国のマイニングハードウエアメーカーであるビットメインである。覚えている方は少ないだろうが、昨年8月にビットコインが分岐してビットコインキャッシュが誕生した際、このビットメインのCEOであるジハン・ウー氏は、「ビットコインの分岐におけるキーマン」といわれていた。

同社は、仮想通貨向けのASICのみ製造しているが、一部では、2017年業績ではエヌビディアやAMDを上回る利益を計上したとも伝わっており、近々香港市場もしくは海外の市場にて新規株式公開(IPO)するといった話も聞かれる。GPUがゲームなどほかの用途があるのに対して、ASICは仮想通貨マイニング専用の装置であるため、大ざっぱな表現をすると、汎用性の高いGPUと専門性の高いASICの覇権争いでは、現在ASICに覇権が移りつつあるといったところだろう。

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