「日本の未来はダム次第」が誇張ではないワケ エネルギー自給率「韓国の半分以下」は大問題

拡大
縮小

また、風力発電に関しては、日本の地形は山が多いために陸上の風は山に邪魔をされて弱くなるので発電量が小さく、しかも複雑に風向きを変えるため発電の効率が悪いのです。これに対して、ヨーロッパの場合は比較的に平野部が広く山が少ないですから、陸上の風が邪魔されにくく、風向きも安定しているので効率のいい発電ができます。

さらに、ほとんど全国の海で漁業を行っている日本では、各地の漁業権との調整の問題もあり、陸上よりも有利とされている洋上風力発電の開発は、特に遅れているという現実もあります。

日本の水力発電は2~3倍に増やせる

このように、世界的に見て太陽光発電や風力発電では不利な日本でも、水力エネルギーに関しては、非常に恵まれた国なのです。

アジアモンスーン地帯にあり多雨であること。山が非常に多いこと。そして、ダムが全国にあること。この3つがそろっている日本では、水力発電が比較的有利な条件にあるからです。

日本のエネルギーミックスでなかなか再生可能エネルギーの割合が増えないのは、水力を増強しようとしないからです。現在、再エネの割合は約15%ですが、その3分の2に当たる9%が水力発電です。つまり、太陽光発電や風力発電などほかの再エネを全部足したものの2倍が水力ということになります。

ところが今、日本のエネルギーミックスでは水力を伸ばそうとはしていません。新規のダムを建設しなくても、日本の既存ダムの潜在的な能力を活用すれば、自然破壊も資金的な無理もなく、水力の発電量を2~3倍にできるという事実(「21世紀の日本は「ダム」によって救われる!」)をほとんどの人が知らないからです。

仮に、水力を2倍に伸ばして18%にすれば、再エネ全体の割合が一気に24%になります。実際、日本の降雨量やダムの多さを考えれば、2倍程度に伸ばすことは比較的簡単にできるのです。一番条件のいい水力を伸ばさないから日本の再エネも伸びないという点に、もっと多くの人が気づくべきでしょう。

日本の再生可能エネルギーを増やすという国際公約を果たすためにも、また、純国産エネルギーの割合を高めて日本の産業や社会の不安を減らすためにも、ぜひ水力発電を積極的に伸ばすよう、エネルギー政策の転換を進めるべきだというのが、福島水力発電促進会議の結論なのです。 

竹村 公太郎 元国土交通省河川局長、日本水フォーラム代表理事

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

たけむら こうたろう / Koutaro Takemura

1970年東北大学大学院土木工学修士課程修了、同年、建設省(現・国土交通省)入省。中部地方建設局河川部長、近畿地方建設局長を歴任し2002年国土交通省河川局長を最後に退官。2004年リバーフロント整備センター理事長。2014年同研究参与。2006年日本水フォーラム代表理事・事務局長。著書に『日本文明の謎を解く』(清流出版、2003年)、『土地の文明』(PHP研究所、2005年)、『幸運な文明』(PHP研究所、2007年)、『本質を見抜く力(養老孟司氏対談)』(PHP新書、2008年)、『日本史の謎は「地形」で解ける』(PHP文庫、2013年)など。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT