「1兆ドル」へ駆け上るアマゾンの意外な素顔 ジェフ・ベゾスは懐が深い経営者なのかも
これは、まさにプログラミングの原理と一緒だ。コンピュータのプログラムは、とりあえずサブシステムという各部品のベータ版を作る。これと同じく、アマゾンは、あらゆるジャンルで中途半端でいいから世の中に出し、計画、実行、評価を繰り返す企業である。
たとえば、ベゾスとアップルのスティーブ・ジョブズとの違いは、そのまま会社のカラーに当てはまる。ベゾスは物理学者なので、ものごとの構造や作り方を知っている。アマゾンの経営にも、ネットを使ったテクノロジー会社を作りたいという気持ちが表れている。
ジョブズは夢追い人であり、デザイナーだ。アップルも言ってしまえば「かっこいい」から始めた。そんなアップルは、GAFAの中でもハードウエアを作る能力が最も高い。
理念の追求に貪欲
ベゾスは、理念の追求に本当に貪欲だ。「すべては顧客のために」を御旗に、無駄を徹底的に省く。幹部でも飛行機のビジネスクラスは禁止。とはいえ、働きに対する報酬はケチることはなく、日本では30代後半から40代後半の部長職ならば、年収は2000万円前後だという。
また、企画会議では、6ページにまとめられたプレスリリースを模した資料を用意するらしい。それを、出席者が最初の20分をかけて読むことから始まる。パワーポイントなどスライドは使わない。
これは、最初からプレスリリースの形にすることで、プロジェクトの完成形を作り上げ、さらに顧客目線を意識させる狙いらしいが、会議の冒頭で、出席者が資料を読むために20分間の沈黙を続けるというのはなかなか聞いたことがない。
金融業界の経験があるベゾスが立ち上げた会社らしく、数字に徹底的にこだわる社風でも知られる。アマゾンはKPI(Key Performance Indicator=重要業績評価指標)至上主義ともいわれる。月、週、日などの期間を決めて、業務内容によって細かく設定された目標を達成したかどうかをチェックしていくのだ。たとえば小売業ならば、来店客数や客単価などの目標を定めていく。しかし、アマゾンのKPIはもっと極端に細分化して管理しているという。
システムの稼働状況はもちろん、顧客からアクセス数、コンバージョンレート、新規顧客率、マーケットプレイス比率、不良資産率、在庫欠品率、配送ミスや不良品率、1単位の出荷にかかった時間などに細分化されている。それぞれの管理担当者に、地域ごと、倉庫ごと、システムごとに割り当てられているという。
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