異業種からの参入続々だが…外国為替証拠金取引(FX)業界に迫る大量淘汰の足音

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証拠金の管理状況を金融庁が一斉調査

同社のカバー先に破綻した米リーマン・ブラザースが名を連ねていたことも命取りとなった。顧客の証拠金をリーマンに預託しており、破綻に伴って貸し倒れとなったのだ。

FXでも表面化し始めたカウンターパーティリスク(取引相手の信用リスク)。金融庁も実態把握へと乗り出している。

10月中旬、金融庁は全国のFX会社約130社を対象に一斉調査を実施した。顧客から預かった証拠金の管理状況を調べるのが目的だ。

FX会社は顧客から預かった証拠金を、会社自体の財産と分けて管理しなければならないことが法令で定められている。信託銀行で管理する「信託保全」が比較的多いようだが、「カバー先」への預託も認められている。

だが、今回の調査結果を受けて、金融庁はルール見直しを検討し始めたようだ。具体的にはカバー先への預託を禁止し、信託保全へ一本化するなどの案が浮上している。仮に実現すれば、カバー先に対する証拠金には自己資金を充当せざるをえないが、「資金調達できる会社は多くない」(業界関係者)のが現状。事業縮小や廃業を余儀なくされるケースが続出する可能性もある。金融庁担当者は「投資者保護の観点から適切に判断したい」と話す。

金融庁の調べでは、07年12月時点でカバー先へ預託した証拠金を自社の資産と同じ口座で管理しているFX会社が41%に達する。07年に破綻したFX会社2社は、いずれも顧客資産を明確に分別管理していなかった。「顧客と自社の資産を明確に分けて管理していれば問題ないが、その線引きがあいまいな例も少なくない」(金融庁担当者)と問題視する。

矢野経済研究所の白倉和弘上級研究員は「今後は経営体力の劣る業者が退場を迫られるだろう」と指摘。業界でも「遅かれ早かれ5~10社まで寡占化するのでは」(FXプライムの三浦俊一社長)との声もある。市場が拡大する一方で、業者の淘汰は避けられそうにない。


(武政秀明、松崎泰弘 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)
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