わずか10cmの車間に収める「NY」の路駐事情 丸山ゴンザレスがマンハッタンに見たカオス
もちろん駐禁は切られるし、停めちゃいけない場所もある。代表的なのは消火栓である。今さら説明するまでもないが、火事が起きたときに邪魔だから。
ただ、いざ運転する側になってみると困った問題が起きる。他州でのことだが、レンタカーで長距離ドライブをしたことがある。西海岸のだだっぴろい道をただひたすら走り続けた。街はどこもスペースに余裕があって、路駐に苦労した覚えはない。
「丸山くん、ニューヨーク行ったら、絶対に無理だよ」
そのときに一緒に車に乗っていた友人から、いきなり失礼なことを言われた。
(何言ってんだ、このアマ!?)
実際にはもっと汚い言葉が浮かんだ。男はセックスと運転に文句をつけられると無条件で凹むかキレる生き物なのだ。男性諸君は同意してくれることだろう。理性的な俺は、気持ちを切り替えて聞いた。
「何がダメだっていうんだよ? 昨日の夜のことでも気にしてんの?」
「はあ? なんのことかわかんないし。私はただ、君の運転がヘタクソだって」
「ヘタクソっていうな! 傷つくだろ!」
「何言ってんの、わけわかんない」
そんなやり取りの根本に何があったのかは置いておくとして、結局彼女が言いたかったのは、ニューヨークで縦列駐車をするには、俺の運転技術では難しいということだ。
「あそこに住んでいる人たちって、車と車の間5センチで駐車するんだって。そんなすき間に入れるなんて恐ろしくてできないわ」
車間距離10センチ程度の縦列駐車は珍しくない
彼女の杞憂だと思っていたが、実際に訪れてみれば、5センチは大げさだが、10センチ程度のすき間での縦列駐車は珍しくない。
駐車する様子にはさらに驚かされた。Kさんという知り合いが住んでいる。彼の車で移動した。目的地に着くと、何のためらいもなく、1、2回切り返しただけで、きちんと縦列駐車に成功していた。軽く俺と話をしながら。
「すごくないですか?」
車を降りて、20センチに満たないすき間を指さした。
「慣れでしょ。でも、他の州から来たヤツには無理かもね。前にLAから来たやつが縦列できなくて帰ったなんて冗談みたいな話を聞いたことがあるよ」
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