わずか10cmの車間に収める「NY」の路駐事情 丸山ゴンザレスがマンハッタンに見たカオス

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
ボコボコのバンパーはニューヨークらしさの象徴(筆者撮影)

LAどころか日本から来た俺には、これだけでも十分にすごかったのだが、予想の斜め上をいったのは出庫の際だった。

エンジンをかけて、ギアをRへ入れたKさんが、そのままアクセルを踏み込んだ。

「ゴツ」っという独特の衝撃が車内に響く。さらに「ゴツ」っと衝撃が響いた。今度はフロントだ。

「いいんですか?」

「何が?」

「思いっきり当ててますよね」

「だって、当てないと出られないじゃん」

「そうですけど……」

所変われば作法も変わる

「何を言っているの?」と言わんばかりのKさん。さすがにアメリカ育ち、動じるところはないようだ。これがニューヨークの作法なのかと思って納得するしかない。

「こうやって少しぐらい当てても、ニューヨークに住んでる人なら別になんとも思わないよ。それにどうしても嫌ならエプロンつければいいんだし」

『GONZALES IN NEW YORK』(イースト・プレス)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

「エプロンって?」

「フロントバンパーとか、リアにゴムっぽいカバーをつけるんだ。そうすれば傷がつかない」

「Kさんはつけないの?」

「あんなの、いろいろダサいじゃん」

かっこよさにこだわっているというよりも、面倒だからっていう感じがした。

この街で車を持つということは、小さな事故が前提になるのだろう。理屈ではわかるが、歌舞伎町でベンツにでもぶつけたら命ないんじゃないかと思うぐらいに交通事故に対してビビっている日本人なので、やはりこの街では運転できないなと思った。

ちなみに、歌舞伎町でヤクザのベンツに実際にぶつけた知人の話によれば、命ではなく、純粋に金のやり取りになるそうだ。

丸山 ゴンザレス ジャーナリスト、編集者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

まるやま ごんざれす / Gonzales Maruyama

1977年、宮城県生まれ。考古学学者崩れのジャーナリスト・編集者。國學院大學学術資料センター共同研究員。國學院大學大学院修了。無職、日雇い労働などから出版社勤務を経て独立。現在は国内外の裏社会や危険地帯の取材を続ける。著書に『アジア「罰当たり」旅行』(彩図社)、『世界の混沌を歩く ダークツーリスト』(講談社)、『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社)などがある。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事