「フランス料理に日本酒」が増えている理由 ワインが苦手な「料理の7要素」とは?

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アメリカに比べると日本食レストランの数が少ない欧州市場に目を向けると、こちらも国ごとに事情が異なる。消費量の伸びはイタリアが顕著だが1リットルあたりの単価に大きな変化はない。ところが、イギリス、フランス、スペインでは単価上昇が見られる。

これは本醸造から純米酒、吟醸酒への切り替えが進んだことが理由だが、中でもフランスが量・単価ともに大きく伸びている理由は、高級フランス料理店が積極的に日本酒を扱うようになったためである。

美食の都、パリの一流レストランが日本酒を取り扱い、料理とのマリアージュを提案しはじめ、それが地方都市のレストランにまで拡大。一部の日本文化を好むフランス人や日本料理店にとどまらず、フランス料理店で飲まれるようになった結果、消費量と単価上昇が同時に起きたのである。

それだけではない。フランス国内で、フランス料理のための酒蔵まで生まれているという。酒蔵はフランスだけでなく、スペインにも2カ所誕生している。まさに現在、フランスを中心とした欧州美食界では、日本酒市場が定着、拡大していく“前夜”の様相を呈している。

急増しているとはいえ、フランスへの日本酒輸出はいまだ英国に次いで10位でしかない。断トツに輸出量が多い前述のアメリカを除くと、2~5位は香港、中国、韓国、台湾で、欧州地域への日本酒輸出は少ない。

フランス料理店で日本酒が飲まれるようになれば、一気に西洋料理の文化に日本酒が入り込み、市場環境が一変する可能性があるが、それだけではない。高級レストランとお酒を囲む市場環境の変化は、世界中のレストランでワインリストとともに日本酒リストが置かれる時代を生み出すかもしれない。

では、なぜこのようなことが起きているのだろうか?

大きな変化がフランス料理界で起きている

それを理解するには、過去10年の間に急変したフランス料理界の環境変化を知らねばならない。元サントリーで利き酒師として働き、その後、フランス局長、欧州局長を務めた後、現在はパリでソムリエ、および日本酒の輸入販売事業を手掛ける宮川圭一郎氏は、ここ数年におけるフランス料理界の変化が、日本から見ているよりもはるかに大きなものだと指摘する。

おおよそ5年前からボルドーの一流ワインを中心に、ワイン価格の高騰が始まった。中国をはじめとする世界的な高級ワインニーズの高まりもあるが、フランスの高級レストランがセラーにそろえるワインのうち、実際に動くのは全体の2割にすぎない。残りの8割は在庫である。

長期熟成型のボルドーワインが高騰するということは、そうした在庫負担も急増することを示す。さらに現在は世界中でワインが醸造されるようになり、それぞれの国、地域ごとに特徴あるワインが造られるようになってきた。ボルドーの一流銘柄だからといって、1本が数千ユーロもするワインが毎日空くといったことはなくなってきているという。

その後、本場フランスのソムリエたちはブルゴーニュのワインを多用するようになるが、当然ながら今度はブルゴーニュワインが高騰しはじめる。2012年以降は不作もあってさらなる価格高騰が起きた。そこで、料理に合わせて世界中で醸造されているお酒を合わせていこうというムーブメントが起き、その中のひとつとして“日本のコメから造る醸造酒”日本酒が受け入れられる土壌が生まれた。

そしてほぼ同時期、フランス料理そのものにも変革が起きていた。

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