「フランス料理に日本酒」が増えている理由 ワインが苦手な「料理の7要素」とは?

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しかし日本の場合、冷蔵技術が発達する前に新鮮な状態で日本酒を貯蔵する技術がなかった。このため、フレッシュな日本酒こそが最高の味であるとされたが、冷蔵技術が発達した現在、日本酒の熟成に関しては研究の余地があるだろう。5度がいいのか、あるいは氷温がいいのか。また、栓は現在のようなプラスチックがいいのか、あるいはワインと同じように呼吸できるコルクがいいのか。通気特性を自在に設定できる合成コルクを開発するほうがいいという可能性もあるだろう。

宮川圭一郎氏(筆者撮影)

日本酒は“日本の風土”に寄り添う形で進化してきたが、ここに冷蔵保存が加わり、さらにはワインの世界で培われた熟成に関する知見を掛け合わせたとき、どのような結果が得られるのかは、まだ統計だったノウハウは得られていない。

宮川氏は「日本酒をどんな温度で、どのぐらいの期間熟成させると、どのような変化が起きるのか。これからトライアルを重ねれば、四号瓶が1本100万円なんていう日本酒がフランス料理店のリストに並ぶかもしれない。フランス料理店には必ずシャンパンを保管する冷蔵庫がある。同じようにワインを販売する酒屋にも冷蔵庫がある。そこに日本酒が置かれるのが当たり前の時代が来ます」と話す。

パリが生み出したトレンドは世界中へ伝播する

さて、これらのことが示すのはどんな未来だろうか。

冒頭でも述べたように、フランスにおける日本酒消費量は決して多いわけではない。しかし、平均単価を上げながら消費量が急伸。その理由が高級フランス料理店における新たなトレンドに起因したものだとするなら、今後、フランス以外のフランス料理店で日本酒が置かれるようになることは想像に難くない。

これまでの例でも、パリの一流フランス料理店が生み出したトレンドは、数年を経て世界中へと伝播していくからだ。しかも現在、フランス・パリをはじめとして、世界中の“星を持つ”レストランには数多くの日本人シェフもいる。日本酒が文化的に受け入れられやすい環境にあると言えるだろう。

さらには、フランス発でフランス料理以外の欧州料理に日本酒を合わせるという動きも活発になるだろう。“薄味”で“出し(あるいは素材)のうま味を生かし”、苦みや酸味を含む多様な味わいの組み合わせで料理が構築されるようになってきた中で、フランス料理がそれを取り入れたとなれば、純米酒・吟醸酒への切り替えが進んでいない国の市場も変化し、西洋料理とのマリアージュのトライアルも進んでいくと考えられるからだ。

あるいは数十年後、丁寧な温度管理で保存されていた2018年ものの日本酒が、オークションで数千万円で落札されているかもしれない。そんなジョークが酒宴の場で出てくるほど、日本酒に対する視線は変化してきた。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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