「社内恋愛」を徹底排除するアメリカ人の事情 上司は部下を「えこひいき」してはならない
だが実は、アメリカ企業では、社内恋愛に限らず、主に上司と部下の間で親密な関係になりすぎること自体、あまり好ましく思われていない。冒頭に挙げたクルザニッチ氏のケースは“non-fraternization policy”に反したと言われているが、この“fraternization”という語は、別に男女の関係に対してだけ用いられるわけではなく、いわゆる親密な関係全般を指すものだ。
ではなぜ、これほどまでに“親密”であることが問題視されるのだろう。それは、組織において、しかるべき権限を持つ立場にある人が、部下と“親密な”関係になった場合、人事考課や業務の割り振りなどにおいて「えこひいき」が起こる(少なくとも、そう疑われてしまう)可能性が出てきてしまうからだ。
前述の調査で、「社内恋愛において避けたほうがいい相手」が「自分の上司」と「自分の部下」だとされている理由も、そこにある。
こういった企業で仮に社内恋愛が起こった場合、上長へ報告することを義務付けている企業も少なくない。そして報告を受けた上長は、その後、恋愛関係にある両者を異動という形で別々の部署にすることが多い。
異動といっても、これは別にペナルティ的な意味合いを持つものではなく、業務上の利害関係を作らないようにするための配慮に近い。つまり、常に“公平である”状態を維持することが、アメリカでは求められているのだ。
「多様性」を守るために「公平性」を徹底する
アメリカには多数の人種、民族、文化、宗教、思想を持つ人々が集まっている。そして、これらに限らず、あらゆる面において、差別をするということは、絶対に許されない。その中でビジネスを行う企業は、つねに公平性を維持しなくてはならないし、また、そういった面が、つねに社会の目から見えるような透明性も、あわせて持たなくてはならない。
そのためアメリカでは、全従業員に対して、定期的(多くは年に1回)に、“ethical guideline(倫理規定)”に関するトレーニングを課すことが多い。トレーニングの内容は、たとえば「特に親密な関係にある部下に対してえこひいきをしてはいけない」といったものをはじめ、「年齢、性別、宗教などの理由で採用や昇進を制限してはならない」といった差別に関するもの、接待や贈答品に関するもの、職場の機密に関するものなど、幅広く、かなりのボリュームになる。
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