トヨタが「製造業」から大転身を迫られる意味 輸送サービスを確立しなければならない事情

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たとえば、JR東日本は鉄道輸送サービスを行っているだけではなく、新潟県の新津事業所で鉄道車両を製造している。JR東海は新幹線車両の技術開発は社内で行っており、製造は連結子会社の日本車輛が行っている。つまり、鉄道会社は「移動サービス」を提供するとともに、その移動に必要な「ハードウェアの製造およびシステム開発」も担っているのだ。

トヨタ自動車のe-Palette構想においても、ハードウェアの開発から製造、またプラットフォームの運用まで関わろうという構造が見て取れる。トヨタ自動車はすでに2016年10月にこうしたプラットフォームを「モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)」という呼び方で発表している。ちなみに、筆者は2014年12月に上梓した『Google vs トヨタ』(KADOKAWA)の中で、今後、自動運転が進む中での「サービスプラットフォーム」の重要性を指摘した。そうした流れが具体的にサービスの構想として出てきたといえる。

トヨタのプラットフォーム上には、ライドシェア・カーシェア・レンタカー・タクシーなどの移動サービスとともに、リテール(小売)、宿泊・飲食、ロジスティクス(物流)などもサービス事業者に公開されるような想定がなされている。果たしてトヨタがサービス事業者に今回のプラットフォームを完全に公開するのかどうかはポイントになるだろう。

付け加えれば、自動運転が実現した時代では、タクシー会社がいまのような形では存在していない可能性もある。タクシー会社の付加価値は、ドライバーおよび車両を確保し、安全に、効率的に運用することである。しかし、自動運転が実現でき、ドライバーの確保が必要なくなれば、車両を製造している自動車メーカー自身で輸送事業を始めるほうが効率的だともいえる。

私たちの生活はどう変わるのか?

では、e-Paletteを活用するようなMaaSが普及すると、私たちの生活はどのように変わるのか。また、それを支える産業はどのように変わるのか。ありうるシナリオについて考えてみよう。

その前に、自動車メーカーの生産体制がどういう変遷をたどってきたのかを知っておきたい。日本の自動車メーカーはグローバルでの日本車のニーズが高まるにつれて、海外の生産拠点にシフトしてきた。一方で、国内の自動車生産はどうなっているのか。

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