トヨタが「製造業」から大転身を迫られる意味 輸送サービスを確立しなければならない事情

拡大
縮小

トヨタ自動車の国内および海外の生産台数を2002年から2017年について見ると、この15年の間に、国内の生産台数は8.5%減少している。

この期間での国内生産台数のピークは2007年の423万台で、ボトムは2011年の276万台だ。2011年は東日本大震災の影響もあり、生産に必要なマイコンなどの基幹デバイスの調達などができなかったことにより大きく落ち込んだ。

またリーマンショック後の2009年は、国内だけではなく海外でも自動車の需要が激減したが、国内生産はピークの2007年に対して34%減の279万台まで落ち込んだ。当時は急激な需要の縮小でパニックが起こっていたが、2017年の生産台数は、その2009年に対して14%上振れているのにすぎない。

ここまでは、MaaSが始まる以前の「現在」の状況である。今後、個人が自動車を保有しなくても生活できるような選択肢(カーシェアやライドシェアなど)が浸透すれば、どうなるだろうか。国内の新車の需要は減少するとともに、自動車生産も減少せざるをえないだろう。

豊田章男社長が示唆するのは競争領域のシフト?

また、自動運転による移動サービスがスタートしたらどうなるか。自分で自動車を運転しなくても移動できることで、自動車を所有したいというニーズはさらに減るだろう。いずれにせよ、今後、需要が継続的に減少していくのであれば、国内工場や雇用をどうするのかという問題に行き当たることになる。総務省の「労働力調査」の分類によると、就業人数が100万人を超える「輸送用機械器具製造業」をはじめとして、国内の自動車関連産業の就業人数はとても多い。

テクノロジーによるこうしたサービスの変化に加えて、自動車の駆動アーキテクチャがガソリン車のエンジンから電気自動車のモーターに変化している。その中では、日本車のエンジン加工精度の高さに伴う「燃費」などの競争優位が、今後は大きく崩れかねない。そうなれば、グローバル市場での日本車の販売台数やシェアを維持するのは難しくなる。結果、現在の生産台数を維持するというのもまた難しくなる。自動車メーカーとしては、「自動車を生産して販売する」というモデルから、「輸送サービス事業」に転換することが急がれる。

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